脆い少女の独占欲

怯える私と黒いあなた　byあき ページ5

若武にそう言われ、私はしぶしぶノートを広げた。



正直言うと、気が乗らない。

なんというか、私情をKZに巻き込まないでほしい。



いつもなら、私情を持ち込むなと若武は言うくせに、
木下さんなら私情なんて関係無しで
話を進めようとする若武に、私は腹を立てた。



だって、これって差別じゃない？




KZは皆、平等の立場じゃなければいけない。

木下さんはもうKZメンバー。


KZ内のルールは適用される。




私は静かに手を上げ、発言の許可をもらって、
少し怒り口調に言った。

「ねえ、それは木下さんの私情でしょ？
　今までの事件を見返すと、それってダメじゃない？」


私がそう言うと、皆は口々に言った。



「アーヤ、私情とか関係無しに、これはKZメンバーの危機だ。
　守らなくてどうする。」

「KZメンバーを守るのも、KZの役目だろ。」

「危険な立場にいるんだから、助けよう！」

「アーヤなら、分かるだろ？」

「仲間を守るのは当然でしょ。」

「立花、一緒に助けよう。嫌なの？」



私は皆の言葉に涙を覚え、俯いた。




皆の言ってることは事実だ。

仲間なんだから、助けなければいけない。



でも、なぜか、嫌な予感がする。



頭で分かっていても、心が分かってくれない。



私は随分冷えた心を抑えて、仕方なく、
事件に参加することにした。



私はノートと向き合い、シャーペンを持つ。



すると、木下さんがそれを見て、手を合わせた。

「立花さん…じゃなくて、彩ちゃん。
　これからは、私が書記をするよ！

　彩ちゃんの荷が少し軽くなると思うし、
　もともとこれから話す事件は私の事件だから、
　私の方が上手くまとめることが出来ると思うんだよね！」

ニッコリと笑う木下さんを見て、私は背筋が凍った。



木下さんの笑顔に裏があるように見えて、
自分の存在価値を奪われるような気がしたから。



私は、断ろうとしたけど、体が震えて、声が出なかった。



ど、どうしよう。



誰かに助けを求めたかった。



でも、木下さんがいる今となっては、
私の異変に誰一人として気づいてくれない。



虚しくて、苦しくて、息ができなかった。

もう何がなんだか分からない。



私は目から溢れそうになる涙を抑えて、笑った。

「そういうことなら、よろしくね！木下さん！」



私は手元に持っていた、今までの事件ノートを手渡してしまっていた。

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