そして、寝ようとするのだけど ページ6
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「立花……?」
後ろから私の名を呼ぶ声が聞こえたんだ。
私を立花と呼ぶのは、上杉君か、忍……!
限りのない喜びが全身に染み渡り、急いで後ろを振り向いた。
でも、そこに居たのは……砂原だったんだ。
「久しぶりだな、立花。」
爽やかな笑みを浮かべる砂原。
砂原の姿を見た瞬間、自分の体ではないかのように動けなくなったの。
涙で視界が揺らぎ、痛みが込み上げてくる。
上杉君でも、忍でもなかった……!
当たり前なのにっ!
分かっているのに期待する私は、愚か者でしかない。
もう声を出す気力すら、残っていなかった。
砂原はどこか切ないように微笑む。
「立花、んな顔するなよ。
久しぶりの再会だろ?
KZの奴らについては……既に聞いてる。
辛いよな、大切な人を失うのは。」
……砂原は何度も大切な人を失ってきたんだよね。
でも、どんなに折れても、必ず最後は立ち上がっていた。
私の誇りの人!……なんてね。
私は、砂原を心配させないように、愛想笑いを浮かべる。
「久しぶり、砂原。
私は元気だよ。
KZのみんなの分まで、生きるから。」
そう、私は生きなければならない。
KZのみんなの分まで。
生きなければ許されないから。
砂原は優しく笑い、私の頭の上に手を乗せる。
「分かってる、辛いんだよな。
無理すんな、立花。
わざと笑わなくていい。
泣きたいなら泣けよ。
相変わらず、トロい。
でも……」
砂原そこで言葉を切り、私が見た中で1番カッコよく笑ったんだ。
「そんな奴が結構好きだったりする。」
砂原……ッ!
私は砂原の胸に飛び込んで泣いた。
自分からこんなことをするなんて、考えられない。
でも、今は何故かそうしたい気持ちが込み上げてきたんだ。
ごめんなさい、みんなの未来を壊して……
ごめんなさい、自分だけ助かって……
砂原は泣く私の背中をただ摩ってくれたの。
砂原のひとつひとつの指が温かくて、背中に染み渡った。
やっぱり砂原は凄い。
大切な人を失っても、立ち直ってきたんだもの。
私は……もう立ち直れない。
きっと……もう昔の私には戻れない。
でも……それでも……生きなければならない。
……私はKZを失った。
でも1人ぼっちじゃない。
自分を支えてくる友がたくさんいる。
だから……
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私は生きることを諦めない
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5人がお気に入り
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あき@草売り大魔王(プロフ) - ほっと梅昆布茶さん» そこまで言ってもらえると照れますね!(笑)泣いてくださるなんて……お優しい!((( 作品をこれほどまでに褒めてもらって嬉しい限りです! (2020年7月7日 22時) (レス) id: 8824d19027 (このIDを非表示/違反報告)
ほっと梅昆布茶(プロフ) - 私はシリアスや死ネタは苦手な方なのですが、この作品はちっともそんな気はしませんでした。何か心に訴えかけるものがありました…… もちろん泣きましたよ、はい。ティッシュを用意していなかった自分を恨んでます… …こんな素敵な作品を、ありがとうございました! (2020年7月7日 21時) (レス) id: e9c40f925b (このIDを非表示/違反報告)
ピ奈 - いえいえ、事実なので、とても泣ける。すごーく泣く、泣いた。 (2020年5月25日 16時) (レス) id: b2cfaa4137 (このIDを非表示/違反報告)
あき@草売り大魔王(プロフ) - ピ奈さん» えぇ!?そんなに褒めてくださるんですか!?とても嬉しいです!!コメント返信遅れてすいません! (2020年5月24日 18時) (レス) id: 8824d19027 (このIDを非表示/違反報告)
ピ奈 - 何回目かなんですけど、なんでこんなに泣けるの?最後に皆んなが笑ってた、ってことが泣ける。はぁ。じゃあ五回目ぐらいなんですけどもう一度読みます。(泣) (2020年5月24日 18時) (レス) id: b2cfaa4137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あき@草売り大魔王 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp
作成日時:2020年5月21日 11時