絡まる絆は知っている

心に空いた少しの隙間 ページ16

「そういえば、お前、名前は？」

七鬼さんが首を傾げた瞬間に肩から落ちて行く髪は、まさに神秘的だった。



サラサラで綺麗な髪だなぁ。


私は、思わず、目を奪われた。





でも、名前って、言ってもいいのかな？


教えたと同時に、記憶が戻るなんてこと、ないよね……？




流石にないか！


私のことを、みんな忘れてるわけだし。





私は安心しきって、声を出した。



油断なんてするものではなかったよね。




「私は立花 彩。」

ただそれだけを言った瞬間、フレンド全員の体が固まった。



あれ？どうしたんだろ……。



ま、まさかバレた！？



私は慌てながら、全員の顔を見た。


「あ、あの、大丈夫ですか？」



私がそう聞いても、誰も答えない。






しばらく、静かな時間が続く。


さっきの明るさが嘘みたいに。






これって、天使が通ったって言うんだっけ。


あの天使が本当に通ったのかなぁ。





私は少し夢の世界へ入りかける。




でも、入る瞬間に、七鬼さんの声が聞こえたから、夢の中へ入らずに済んだんだ。


「俺、お前のことを知っている……？

　どこかで聞いたことあるんだ、お前の名前を。」





ば、バレかけてる！


暴かれる前に話を逸らすかしない！



私は慌てていることを悟られないように、なるべく笑顔を絶やした。

「そ、そういえば、皆さんはお友達なんですか？」






私の額から、今にも汗が出そうだった。


静かに震える足、滲み出る手汗。





せっかく取り戻せる私の自由なんだ。


我慢しなければ……。





そんな緊急事態の私をいざ知らずに、七鬼さんは、自信満々に胸を張った。



「実は、俺たち、探偵をやっているんだ。

　今回はその集まり。



　リーダーも居るんだが、真面目で優しい良い奴なんだ。
　リーダーは……って、リーダーは誰だ？」



七鬼さんは嬉しそうに話す顔をやめ、フレンドを見渡した。


まるで、迷子の子供ように。




うっ、フレンドの“元”リーダーって私じゃない！






みんなもそれを不思議に思ったのか、口々に言い始めた。



「確か居たわよね。リーダー。」

「あぁ、居たが……誰だ？」


辺りはほぼ収集がつかず、ただリーダーの行方を言葉で探していた。







私は少し呆れつつ、笑ってしまった。









少し懐かしくて、少し寂しくて

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