夢 ページ17
左馬刻side
あれから少し話をして、二人は帰って行った。
そのままAも風呂やらなんやら
諸々の用事を済ませ、早々に寝室に戻ってきた。
A『明日、熱下がらなかったら
病院に行こう。一緒に行くから。』
左馬刻「………いや…いい。」
A『そういうこと言わないで。
とにかく、今日はもう寝よう。…寝れそう?』
左馬刻「……あぁ。」
返事をして、ベッドの中へ入ってきた
Aに抱きつく。
A『おやすみなさい。』
左馬刻「おぅ。おやすみ。」
夜中
うなされて目を覚ますと、俺は泣いていた。
泣くなんて、数年ぶりか。
いつだって、泣く時はこいつの前でだけだった。
今回は…………そうだ。
Aが一郎の奴らと親しくなって
俺のもとからいなくなったんだ。
かつては仲間だった、
弟分のような存在だった奴。
あいつの事は許せねぇ。
だが、Aがあちら側へついてしまったら?
俺は、プライドや自分の信念より
Aと一緒にいることを取るかもしれねぇ。
…………離れたくない。
もう、誰も……
俺の前からいなくならないでくれ。
ギュッ
左馬刻「っ!………A…?」
A『いなくならないよ。
大丈夫……ずっとそばにいる。
他の誰にも、興味ないよ。
………………こっち向いて……チュ』
左馬刻「…っ…ぜってぇ……
いなくなんじゃねぇぞ………っ……
一郎のとこには、行くな。」
A『うん、……分かってるよ。
会ってないから。
私は左馬刻のものだから。』
俺が落ち着くまでずっと俺を強く抱きしめ、
声をかけ、キスをして、ただ、待ってくれる。
こいつは、俺がどんな態度を取っても
全てを受け入れてくれる。
それが心地いい。
だから、分かってしまう。
一郎だけじゃねぇ。
こいつはどんな奴の心にも入り込む。
自然に、なんの摩擦もなく。
だから、怖いんだ。
いつか、俺の手元から離れてしまいそうで。
そうなった時、
俺は自力で立っていられるんだろうか?
その恐怖が、俺の覚悟を鈍らせる。
A『……ときっ!……左馬刻っ!』
左馬刻「…っ!………聞こえてる。」
A『嘘。
…………ねぇ、左馬刻。
私、左馬刻が好きなの。どうしようもなく。
私には左馬刻の隣しか居場所がないの。
お願い、一人でどこかへ行かないで。』
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作者名:ゆず | 作成日時:2019年7月17日 2時