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01 : ある1人の逃走劇 ページ2





「本日で通院は終了です。約半年間お疲れ様でした」


ミンミンと蝉が鳴いている。

入道雲を背景に大学病院から出てきたAを見て、私___三澄ミコトは駆け寄ろうとしたが、医師と彼女が話す様子を見て足を止めた。


「先生。ありがとうございました」

「薬の塗布だけは続けてくださいね。それにしても、あなたがここに戻ってきた時は驚きましたよ。それも医師ではなく患者として」


茶髪で短髪の女性は、丁寧にお礼を述べるとまだ少しあどけなさが残る顔で苦笑する。それだけ見ればごく一般的な容姿をした女性だが、あえて違う点を挙げるとすれば、この暑い中肌を露出することなく長袖のカーディガンを着ているところか。


一方、彼女の治療を担当したのであろう医師の顔はどこか引きつっていた。


「…あなたは結局何をしにシリアに行ってきたのですか。突然退職したと思ったら怪我だけして戻ってきて、通院するようになって。それ、あなたが1番嫌っていた医療では?そういえばあの時なんて言ってましたっけ、…あぁ、」


「_________“救うべき命ではない”

でしたか」

「A!!」


険悪な雰囲気に、最初は気を使っていた私も思わず声をかけた。


「ミコト、」

「あぁ、お友達がいらっしゃったようですね…それでは」


医師は私の姿を見て話を切り上げようとしたが、ふとAの耳に口を寄せ、囁いた。


「________________、」


私の耳には届かなかったが、Aが僅かに目を見開くのが見えた。

彼女は最後にもう一度ありがとうございました、と述べ一礼するとこっちへ駆け寄ってくる。その表情は先程より柔らかいが、少しぎこちなく影が見えた。


「ミコト!久しぶりだね。わざわざ迎えに来てくれてありがとう。元気にしてた?」

「うんとっても元気。さ、早く行こうか」


Aの後ろでは医師が歪んだ表情のまま彼女を見つめていた。それがどうにも腹ただしく、逃げるように病院を離れた。



病院前でAとタクシーを拾い、行き先を告げた。


「UDIラボ…西武蔵野研究センターまでお願いします」



【#1 逃避行】



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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。木林さんとのやりとりに感銘を受けました、もし続きがあるのならば更新をお待ちしております、、! (2022年6月1日 19時) (レス) @page24 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - なんだか急かしてしまってごめんなさい。素敵なお話なのでつい。のんびりお待ちしております。 (2020年10月26日 23時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
雪鳩(プロフ) - ELさん» コメントありがとうございます!私生活が忙しく執筆が遅れていますが、ゆっくり更新していくつもりなので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2020年10月25日 2時) (レス) id: 76789842a1 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪鳩 | 作成日時:2020年8月24日 0時

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