１５【おそ松さん】一卵性六つ子と処方箋15【最終章】

TRUE END ページ17

父は慌てて私をあやした。



『今日も、明日も、明後日も一緒だよ。きっとな。でもずっと先までは解らない。
…だってそれが、…大切なAが生きている証拠なんだよ。』



訳の分からない喪失感を負わされていい迷惑だ。
…と、今なら思っただろう。

そして、今ほどその言葉を噛みしめられる状況もない。




『”安定”を求めるだろう、なら、動きなさい。
上下のある永遠を求めなさい、上下のない永遠は”停止”だよ。』





■■■■■



薬剤師国家試験、合格発表日から２ヵ月が経った…５月。



私は、アカフジ調剤薬局の新人薬剤師として働いていた。




『本日担当いたします、Aです。よろしくお願いいたします。久々のご来局でしたが…お薬のお手持ちはありましたでしょうか。』
『処方されたお薬は、抗菌薬、痰切り、咳止め…この薬は眠くなる恐れがありますので…』
『そのお薬と、このお薬は混ぜると苦くなる恐れがあります。飲む時間帯は同じでも口に入れるタイミングは別にしましょう。』



少しは薬剤師らしい動きが出来ているだろうか…？



「おーい！A！！この調剤ミスってんぞ！！ジェネリックおっけーって言ってただろうが患者がよォ！！」
「すみませんっ京極さん…！」
「こりゃ先発だ。俺が最終確認の監査で良かったなぁ？」
「こーら！！キョーゴくん！新人を必要以上に弄らない！！！」




――あの日…私は結局……選べなかった。




泣いて、選べない…と言ったわけじゃない。
だって選ぶとか、無理だ。
私には荷が重すぎたんだ。



ずっと一緒に居たい。
その気持ちは、今でも変わらない。


選べない、と泣いたのではなく。
あえて選ばせないでほしい、って笑って言えた事だけが救い。

松野家の六つ子達には、感謝してもしきれないほどの思い出をもらったのだから。
みんな大事な人で、みんな大切な人だからこそ。
選べない、出来ればこれからも仲良くしてほしい……と。



…”彼ら”は、納得してくれたようだった。



それでも今から思えば、『選んでくれ』と勇気を出してくれた彼らに対して、
とてもわがままな選択をしてしまった気もするけど。

選べなかったのは事実、大切故にだったのだから仕方がない。
…と自分に言い聞かせている最中だ。




「Aちゃーん！そこの調剤終わったらお昼入ってー！」
「はい！」




彼らの内の一人を選択した未来……。

それがどういったものだったかなんて見当もつかないけど。

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