憔悴と恋慕2 [一松][十四松] ページ40
「ふんぬ!!!!」
ガシャ…カランッ!
氷の小気味のいい音を立てて、彼は持ってきた麦茶を一気に飲み干した。
「…!!?」
てっきり貰えるのかと、と硬直する私。
彼は麦茶を口に含みながら縁側に座る私を見つつ、靴下のまま中庭に降りた。
一体何をするのかと、きょとん、と見ていると…彼は夕日をバックに…
ピョロロロロロロ!
「!!!?!?」
…気のせいだろうか、十四松さんの頭頂部、鼻腔、耳の穴から先ほど飲んだらしき麦茶が噴出している…!!?
これっ…!これ病院いかなきゃいけないやつでしょ今スグ!!!!
焦る気持ちはあるのに、彼が普通そうにしていることと、変顔も併用してくるのでつい…っ
「…あっ…は、あははっ、ははは…それっ、それ病院…っ、あははっ」
久しぶりに声を上げて笑った。
実習中は荒むことも多かったからか、こうして笑うのは久しぶりで。
私が笑ったのを見届けて、十四松さんは口を閉じてそっと笑う。
「あっは!Aちゃんが笑うと嬉しインサイドぉー!」
そう言って、そっと頭を撫でてくれた。
目の前で揺れる黄色の袖。
その手は頬に。
視界が開けたと同時に、こつん、と彼は私の額に額を重ねた。
「…//」
布越しの両手で両頬を包まれる。
お互いの呼吸を感じる至近距離…。
「あ〜〜〜……どうしよ…兄さん、トド松……」
彼らしくない、か細い声が聞こえた
「Aちゃん、あんね…」
「は、はい…」
落ち着いた声、その声に反応して気持ちを傾けた時。
十四松さんは、ばっ、と私から離れた。
ガラ…
「…?…A、に十四松?なにしてんの、こんなところで…。」
「あ!一松兄ーさん!あんね!Aちゃん元気ナイターで!麦茶これ!!」
「……あー、あれやったの。滑るリスク高いやつでしょ。」
彼が離れたのとほぼ同タイミングで煮干しを持った一松さんが現れた。
何も不思議なことじゃない、中庭に遊びに来る猫に煮干しをあげるのは一松さんの日課でもある。
むしろ不自然に居座ってしまったのは私の方。
「…。」
沈んでいた気持ちから、笑顔をもらって、鼓動が早まって、一松さんに会って、と感情は循環する。
その循環に流されて、私は、十四松さんの感情の機微を取りこぼしたのではないか…なんて一抹の不安がよぎった。
「元気ないって…」
「あ…」
一松さんがそっとこっちを見降ろした。
「…どうかした?」
「……。」
思わず下唇を噛んでから、そっと今日の事を話した。
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ちよ(プロフ) - イラさん» イラちゃん…!ありがとう…!ほっこりしてくれたならよかった…!でもこっからは原作ネタの六つ子話とかも入れていく予定だからねww応援本当にありがとう! (2016年10月22日 21時) (レス) id: 7980a9d63a (このIDを非表示/違反報告)
イラ(プロフ) - お久しぶりに来たけど相変わらずほっこリする小説だよ〜!!人の温かみや辛さがひしひし伝わってきたよ!!ゆっくりで良いから頑張ってね! (2016年10月22日 16時) (レス) id: 1dff651d8b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - わあ”!さきさん!!どんぴしゃですね!!笑 現役薬学生さんにコメをいただけるとは…!本当にありがとうございます!共感ほんとありがたいです〜><//(実習はもう終わられたのでしょうか(/ω\)) さきさんの大学生活も心の底から応援しております…! (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - (実際プロタミン聞かれたときに心臓が体外に吹っ飛ぶかと思ったよね…) (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 私某私立女子大の薬学生なのですごく共感できます!これからも頑張ってください! (2016年10月17日 22時) (レス) id: 1e3e119e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2016年9月19日 20時