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君の日常2[一松] ページ25

なんでもないよ、と近づく。

近づく……が……。


「………。」
「…?」


近づいたはいいものの、触れられない。
ん…?なんだ…、

こんな時に、…え…?


「………えっ。」


一瞬。そして一瞬ずつ。
猫に差し伸べた自分の手に、血糊がついているように見えた。

まさか。
なんで?だって。
解剖をしてから、生き物を遠巻きに見たりしたじゃない。
その時は特に、何も…思わなかったのに…。

「…ぁ…ッ…れ」
ぶわ、と冷汗が流れる。



『アッハハハハハ!ごめんねえ!私こういうのテンションあがっちゃってさぁ!』
ニャー!
『この子たちの死をまだ何とか、何とか、「より価値のあるもの」に変えられる人はいませんか。』



「…、…私……少し、…離れるね……」
「…??A…?」

そっと立ち上がり、ゆっくりと路地の外へ向かって歩き出す。
最低だ。
最高の思い出に向き合っているって時に最低だ。
上がりだした呼吸が止まらなかった。

"殺した理由は、正当な理由がありました"
"どうして私があの猫に触れられるんだっけ"

優しい彼が触れてあげればいい。
今はとても触れる気がしない。
さっきまで幸せだったのに、なんでこんなに心はややこしいんだろう…。

たぶん…彼がとりわけ、猫に優しい…その事実が好きだからかもしれない。


「ッ…A。」
「…!」


後ろからそっと肩に手を置かれた。
妙な離れ方をしたから、追いかけさせてしまったんだな。
なんて、脳が実況する。

「あの…ね…ネコ、見れて本当に幸せだった。信じて、なんて変だけど…」
「……信じるよ。Aが言うなら。落ち着いて。」

ちょっと家に戻ろうか。

そう促され、元気な猫を一目見ようとしてやめ、その場を離れた。


ニャア-ン!


後ろから、猫の声がする。


***

「ああ…そっか、それで…。」
「ごめんなさい。ほんと弱い…こんな学生…はぁ…」

こんな学生いないわ、と突っかかってしまいそう。
下手に自分の中で『意識してしまう死』があるからだろうか。

コト、と居間のちゃぶ台にお茶が置かれる。

「こんな精神状態で、申し訳ないです。ああでも…」
「…?」
「本当に、元気そうで良かった…。」
「……。」

その言葉を聞いて一松さんは鼻で息をつく。

「…猫は、喋らないからね。」
「え?」
「あんたがそうなら僕も弱いもんですよ。猫と一緒に居られるのは、猫が喋らないから。都合がいいダケ。」
「…! そ、そんな…」

まるで、彼が彼に言い聞かせているようだった。

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ちよ(プロフ) - イラさん» イラちゃん…!ありがとう…!ほっこりしてくれたならよかった…!でもこっからは原作ネタの六つ子話とかも入れていく予定だからねww応援本当にありがとう! (2016年10月22日 21時) (レス) id: 7980a9d63a (このIDを非表示/違反報告)
イラ(プロフ) - お久しぶりに来たけど相変わらずほっこリする小説だよ〜!!人の温かみや辛さがひしひし伝わってきたよ!!ゆっくりで良いから頑張ってね! (2016年10月22日 16時) (レス) id: 1dff651d8b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - わあ”!さきさん!!どんぴしゃですね!!笑 現役薬学生さんにコメをいただけるとは…!本当にありがとうございます!共感ほんとありがたいです〜><//(実習はもう終わられたのでしょうか(/ω\)) さきさんの大学生活も心の底から応援しております…! (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - (実際プロタミン聞かれたときに心臓が体外に吹っ飛ぶかと思ったよね…) (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 私某私立女子大の薬学生なのですごく共感できます!これからも頑張ってください! (2016年10月17日 22時) (レス) id: 1e3e119e4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2016年9月19日 20時

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