君の日常3 [トド松] ページ17
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店を出て、表通りに出るのかと思いきや店横の細い路地へ。
現世から隔離されたような薄暗さ。
トド松さんは私を壁に押し付けるわけでもなく、そっと肩を持った。
「…ごめん、…悲しませちゃったかな…」
「…嬉し泣きしそうで…はは。」
「…ん!ないかなー…!」
多くはないが、とどめていた液体が数粒、涙袋から滑り降りる。
強がってもしんどいでしょ、という彼の優しい声音を聞きながら、涙が出た理由を考えるが…
…あまり出てこない。
大好きな妹も、大好きな弟も、強く抑制してしまったことを今更…。。
決意したなら、後悔なんてしてはいけなかったのに…。
慌てるというよりは、切なそうに、彼は私の頬の涙を拭う。
「…、もー…めそめそと…すみません…」
「……。」
情けない涙で、彼の指と私の頬は摩擦がなくなっていく。
嗚咽もなく、数滴ぽろぽろ
感情は波がなく、穏やかだった。
「…ッ……」
「………………Aちゃん、ちょっとごめんね。」
「…!」
ぎゅう、と抱きしめられた。
びっくりして膝の力が抜け、お互いにずるずると座りあう。
薄暗い背景に、愛情を表すような、桃色。
「ガラじゃないけど、ちょっと、…こうしててもいい?」
断る理由なんてなく、ゆっくりと頷いた。
なんて温かい…。
"あざとい""女子力高い"と言われる彼の腕は、れっきとした男性のものだった。
「何回だってしゃがんでもいいんだよ、Aちゃん。そしたらその時は、僕がまたお茶に誘うし。」
「……。」
あの時も、この時も、私がしゃがんでいた時に助けてくれた彼。
見上げることもできず、縋るように抱きしめ返した。
「今度はスポーツ広場で瀕死にしたりしないから、ラテアートが可愛いって評判のカフェ、行こうね。」
「…ッあ、はっ…うん…っ。」
そんな悲惨な状態だったのかと笑ってしまう。
笑顔が誘い水になったように、ゆっくり、何度か頷き返した。
****
だから本当に。
タイミングの神様とやらが降臨したんじゃないかと言うほど…。
ピロリロリロン…ピロリロリロン…
「ん…ふぁ。なぁに、電話ぁ?」
「すみません。…少し部屋を出ますね。」
…ピッ…
それはそれはドでかいタイミングで。
その日の深夜、弟から電話がかかってきた。
急いで寝室を出る。
『うっす。』
「……あれ、久しぶり。元気?」
『うん。いや、あのさ、全然連絡来ないから。生きてるかなって。』
「……! い、生きてるよ、うん。」
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ちよ(プロフ) - イラさん» イラちゃん…!ありがとう…!ほっこりしてくれたならよかった…!でもこっからは原作ネタの六つ子話とかも入れていく予定だからねww応援本当にありがとう! (2016年10月22日 21時) (レス) id: 7980a9d63a (このIDを非表示/違反報告)
イラ(プロフ) - お久しぶりに来たけど相変わらずほっこリする小説だよ〜!!人の温かみや辛さがひしひし伝わってきたよ!!ゆっくりで良いから頑張ってね! (2016年10月22日 16時) (レス) id: 1dff651d8b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - わあ”!さきさん!!どんぴしゃですね!!笑 現役薬学生さんにコメをいただけるとは…!本当にありがとうございます!共感ほんとありがたいです〜><//(実習はもう終わられたのでしょうか(/ω\)) さきさんの大学生活も心の底から応援しております…! (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - (実際プロタミン聞かれたときに心臓が体外に吹っ飛ぶかと思ったよね…) (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 私某私立女子大の薬学生なのですごく共感できます!これからも頑張ってください! (2016年10月17日 22時) (レス) id: 1e3e119e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2016年9月19日 20時