Short Story × Songs 【QK】

電気飴　sgi ページ40

「すまん、遅れた！」

勢いが凄すぎて、スライディング土下座でもするんじゃないかってぐらいに謝ってくる須貝先輩。
この人は、私が密かに想いを寄せている先輩である。








『今度の日曜日、空いてますか？』

研究室で二人きりの時を見計らって聞く。
今の私の顔、赤くないかな。大丈夫かな。
そんな私の思いとは裏腹に、須貝先輩はニッコリ笑って空いてるよと言ってくれた。

『夏祭り、一緒に行きませんか？』


快く承諾してくれたその日から、私は今日まで少しでも可愛くなれるように頑張った。
須貝先輩は研究者モードだとそれはそれは大人な雰囲気を醸し出すが、オフモードになると子供のようにはしゃぐため、夏祭りなら浴衣でしょ！と私が言いたくても言えなかった言葉をさらりと言ってしまう。
そのおかげで私は浴衣で行っても浮くことはなかったし、須貝先輩の甚平も見ることができて万々歳だ。


「浴衣似合ってるね〜！いつも白衣しか見てなかったから新鮮だよ笑」

その言葉、そっくりそのまま先輩にお返ししますよ…！
思っていた100倍以上先輩の甚平はかっこよくて、紺色の甚平がこの世で一番似合うのは多分、いや絶対に先輩です！と声を大にして言いたい。
本当に私、よく誘えたよ。泣きそう。せっかくのメイクが取れちゃうから泣かないけど。




「うぇーい！」

『流石です！エイムがピッタリでしたよ！』

須貝先輩は、とても夏祭りを楽しんでくれて、金魚すくい、ヨーヨー釣り、そして今は射撃で一撃で景品を取ってしまった。
え、イケメンすぎない…？ただでさえ甚平で5割増しぐらいしてたのに、こんな好プレー出されたら好きが止まらないよ…。

「Aはどこか行きたいとこある？なんか俺ばっかり楽しんでる気がするんだけど！」

『えっ！？そんなことないですよ！？』

だって、須貝先輩と一緒にいられるだけで楽しいもん…
なんて言えるわけもなく。じっと私を見つめてくる先輩の目には耐えられない。

『じゃあ…綿あめで！』

絶対にこれは何か言わないと逃れられないと思い、咄嗟に出たのが綿あめだった。
何可愛い女子を演じてるんだよ自分…ド理系の研究者のキャラじゃないよこれは…
一人項垂れている私を他所に、私の手を引いて綿あめの場所まで連れていく須貝先輩。
私がずっと手を繋ぎたくても繋げなかったのに、彼はいとも簡単に繋いでしまうなんて。
でもそれが先輩らしいなとも感じた。

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