硬貨11枚 ページ12
和やかな雰囲気だった空間は一転、冷たく刺さるような空気になった。
ルーク「こんなにも無防備で警戒心がないのは感心しないね。それも屈強な刃物を私が持っているというのに」
"いつ命を落としてもおかしくない"なんて耳元で囁く。
そんなルークの冷ややかな発言に、ガラス玉のような大きな目が細められた。
ルーク「例え肉食動物だとしても、キミは被食者に過ぎない。スラム育ちの君なら、命は儚く、散るまで一瞬だということは心得ているだろう?」
『もっちろん!だからいつ消えてもいいように毎日全力で生きてんの。…でも、散り際ぐらい自分で決めるからお構いなく。』
自分よりも逞しい腕を掴んで首元に引き寄せる。
冷たく細い銀が、喉元に触れた。
『今ここで僕が死んだら、狩人サマは一生傷を負うのかなぁ。僕のこと、ちゃあんと覚えててくれる?』
ルーク「あぁ、そうだとも。キミの死を永遠に嘆き、立ち直れないかもしれない。…一目見てあんなに気分が高揚したのは久しぶりだった。例えここで命尽かずとも忘れられないだろうね」
ルークの恍惚の笑みを初めて見たAは、一瞬だけ怯んだ。
やはり今まで相手してきた人とは根本が違う。
今ここで血管を切り裂いたら、獣人の鮮血が必要なあのレシピを完成させてしまうのだろう、と頭の片隅で考える。
『………ま!僕は赤似合わないからそんなことしないけどね!』
"お財布取ってくる!"とルークの腕をすり抜けて、軽く髪を払いながら屈託のない笑みを浮かべた。
ふと手首を見ると、ルークのたくましい腕に赤い跡がついていた。
自分の腕を引き寄せられる程の腕力、跡が付くくらいの握力、狩られる立場でありながら絶対に目を逸らさない度胸。
ルーク「ブラボー……!こんなにも小柄で身体能力に長けた獣人がいるだなんて……!!」
あと少し動かしただけできっと首に紅い花が咲いていたことだろう。
だが、手を緩めることは愚か、引き寄せていた。鋭い切っ先が喉元に当たろうとも全く動じていない。
あのまま自分が力を抜いていたら、喉元を貫通し、呼吸困難どころか出血多量で倒れていたはずだ。まだ齢16だというのに、自分が一時的に生を預かった。
ルーク「あぁ、
ゾクリと体が震える。頬が熱い、血液全てが沸騰したような熱さ。
鏡には、今までにないくらいに惚けた自分の顔が映っていた。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです!!ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく読んでいて楽しい作品でした!またどこかで貴方様の作品に出会えますように(^ν^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください!応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます!お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか? (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高! (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諒 | 作成日時:2020年8月2日 13時