【ツイステ】捕食者。【男主】

硬貨12枚 ページ13

美容室に行ったのはどのくらい前だったか。
料金も場所によって様々。でもこれくらいいい仕上がりなら5000はくだらないか……？



この前もたくさんもらったし……その内の10000弱なら安い方か。
思考を巡らせ、マドル札を差し出す。




ルーク「料金なんていらないさ！寧ろ私が払うべきだ、たくさん話せて髪も触らせてもらえたのだから」


『でも、こんなに綺麗にしてもらったのに』


ルーク「気にしなくていいさ、しまって」


『ヴ〜………』




この後、しばらくの間攻防を続け、結局折れたのはAの方だった。
随分と不服だったが、このまま続けても時間の無駄だと判断。渋々財布のファスナーを締めた。




再び紅茶を入れて、ティータイム。
今度はミントティーではなくフルーツティーだった。



どうやらルークがブレンドしたものらしい。
あまり紅茶は嗜まないAでも美味しく飲むことができるような、飲みやすい味。
蜂蜜を一匙入れて掻き回しながら、ルークと会話を交わす。



2人の声ばかり響いていた部屋に、ノックの音が響いた。
Aは知らない匂いを感知して少しだけ身構えた。




ヴィル「失礼。………あら、レオナのとこの子じゃない」




やっぱり見たことのない人。お互い初対面。
綺麗な人だな、なんて思いながら所謂営業スマイルを貼り付ける。




『こんにちは、お邪魔してます』


ヴィル「気にしないで。…近くで見るといい顔してるわね」


『ありがとうございまぁす』




レザー地が顎を掬う。瞳の奥まで見られているようだった。



手袋を外すと、直接Aの肌に触れた。
ちらりとルークの方に視線をやるも、優雅に紅茶を飲んでいた。絵になるのが悔しい。




ヴィル「………アンタ、化粧水使ってる？」


『えぇと、何か有名な……び、びる……？』


ヴィル「…シェーンハイト？」


『多分そうだったと思います』




素直にそう答えると、ヴィルは満足そうな顔をした。
…あれ、寮長先輩もびるみたいな名前の人のこと話してたっけ？




ヴィル「ヴィル。ヴィル・シェーンハイト。その化粧水を作ったのがこのアタシ。中々見る目あるじゃない。」




"パパからもらった"なんて言えないなぁ、と思いながらへらりと笑う。
同時に耳もぺしゃりと垂れた。




その後、ヴィルはルークへの要件も忘れ、Aと話をしていた。
Aは適当に相槌を打ちながら紅茶を飲んでいただけ。
大人の話を聞く為の上っ面な態度が、まさかここで役に立つとは。

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