夫がいつもお世話になってます。

【１６匹目】 ページ18

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｢ねーえ、あの人には会えたの？｣



机を挟んで反対側から友達がこちらの顔を覗いてきた



｢えっ…！？いや、どうして？｣



｢だってずーっと考えてるでしょ。あの日会ってから｣



あの日、名前を聞くことすら出来なかったあの人のことがずっと忘れられなかった
頬に触れてきた感覚は今でも覚えてるし、顔だってはっきり覚えてる



｢そんなこと…ないよ｣



｢いやそんなことあるね、あの日からずーっと上の空だもん。いっその事NRCに乗り込んでみたら？｣



｢そんなことできるわけないでしょ…！｣



｢でもあと１ヶ月で私たち卒業だよ？もしかしたらあの人も卒業しちゃうかもしれないんだよ？私たち卒業したら社会人だよ？会える可能性もっと減っちゃうよ？｣



｢でも、迷惑はかけたくない｣



｢でた、Aの迷惑かけたくない精神。そーやって我慢して後悔しても知らないからね｣



…分かってる
我慢した結果後悔したことはある



でも、人に迷惑かけたくない
それが迷惑だと思われてなかったとしても



｢…行かない｣



私は、彼には会いたいが困らせるのは嫌だ




.




社会人になり数年
私は魔法を少し使うことは出来るが、普通の会社の事務として働いていた



皆優しく、楽しい職場だった
毎日が充実していた



それでも、数年前に会ったあの人が頭から離れることは無かった
今でもまだ鮮明なのだ、あの記憶だけが



あの日、目が合った時の一瞬の記憶が今でもずっと心の中に残っているのだ



｢…会いたいなぁ｣



もう一度、一瞬でも彼を見つけることが出来たら次は…っ



｢…っ！｣



考え事に集中しすぎたせいで、前にいた人の背中にぶつかってしまった
最悪だ、ただの一本道なのに…っ！



｢ごめんなさい…っ、｣



恥ずかしくなって、バッと頭を下げる
どんな顔をしているか怖くなって、相手の顔が見れなかった



｢いや、問題ない。大丈夫か？｣



｢はい、私は平気です。それでは…！｣



｢あ、おい…！｣



振り返らずに早足で歩く
最悪だ、怒ったかな？顔も見ないで去っちゃったから
早く帰ろう、姿が見えなくなるまで早歩きで…



｢おい、待て…！｣



｢ひゃ…っ！｣



グイと後ろから強く腕引かれる
聞こえたのはさっきと同じ声



｢ごめんなさい…！お詫びはまた後日しますので…！｣



許してください！と顔をあげた先にいたのは記憶に焼き付いていた顔



｢…へ｣



また会いたいと思っていた彼が、目の前にいた

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