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第12話 ページ16

「はぁっ…」


耐えきれずに熱っぽい息を吐き出せば、其れに伴い顏にじわじわと熱が集まる。


恥ずかしい。もう目を開けたくない。そんな気持ちでいっぱいだが、流石にずっとこのままでいる訳にもいかない。

おそるおそる目を開けば、暫く目を閉じていた為にぼやけてしまった視界にピクリとも動かない中也がうつった。




暫くの沈黙。


ふと、自分の顎を掴む手の力が弱まった事に気付き、その手をはたき落としたA。そして、真っ赤な顔を隠すためにか急いで口元を手で覆い、彼からの視線に耐えきれないとでも言うように横を向いた。


「ごめ、あの…っ口調、を指摘されたのが……恥ずかしくって。」





またもしんと静まる空間。


その間、数分はあったように思える。

途中、Aの足元に一匹の猫がすり寄ってきたが、相手をして貰えない事がわかると、にゃあ。と一つ鳴いて名残惜しそうに離れていった。









両者、微動だにしない。
…とても静かな平日の路地裏だった。




「ごめん。」



まるで、そこだけが時間が止まってしまったかのような空間。


動き始めたのは彼女だった。



空間にかかった魔法はとけ、2人の視線が絡み合う。





いや、違う。魔法がとけたのは…









----------ドサリ。




暫く見つめ合えば受け身もせず、糸が切れたかのように倒れる中也。彼はまだ、動けない。


彼女はもう一度、よく通る声で言う謝った。




「ごめん。これは私のエゴだけど。恥ずかしいからちょっと忘れてもらうね…おやすみ。」



ピクリとも動かない彼を壁際まで半分引きずるように運び、座らせる。


それから、慣れた手つきで携帯端末のタイマーをセットした。鳴らす時間は10分後。




「…10分経っても起きなかったら叩き起こそっと。」


そう、物騒な事を呟いた後、自分の外套を彼の肩にかけてから彼女は先程の猫を探し始めたのだった。

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作者名:じゅき | 作成日時:2016年6月29日 20時

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