サディスト少女は今日も今日とて、【文豪ストレイドッグス】 (ページ11)

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第９話ページ11

コツリ、コツリ。

己の後ろから聞こえるヒール音に男は眉を顰めた。

…もしや、これは。
確認の為に歩みを止めれば予想通り後ろからの音も止む。それを聞き、男の中にあったある可能性は確信へと変わった。

「…何の用だ、A。」

振り返らずにそう問えば、クツクツと笑う声が聞こえた。嗚呼、面倒な奴に絡まれた。

「いやあ、君が今日は休日だと聞いたから。…会いたかった、中也。」

それの言葉を聞き仕方なく振り返れば、悪びれもなく彼女はニッコリと笑う。

…何故それを知っている。というか俺は会いたくなかった。お願いだから休日くらい絡みに来ないでくれ。面倒くせぇ。
たくさんの意味を込めて睨みつけるも、そんなものに怯える女ではない事くらいは既に知っていた。

「やっぱり君は短気だねえ。そんな事してるようでは、女性にモテないのでは。」

「あ”?男に睨みつけられてケラケラ笑ってるような女に言われたかねぇよ。」

〝正論だ〟

そう言って尚も笑い続ける目の前の女に自然と口角が上がる。
これが俺なりの彼女への殺意の向け方だった。

ネクタイを少し緩めようとすれば静止の声がかかるのも、何時もの事。

「おっと、待ってくれよ。私は君の鬱憤晴らしに付き合う気はない。残念ながらこれから私に付き合わされるのは君なんだ。」

「というか、お前の異能力と能力を持たない私は相性が頗る悪いから戦いたくないと何度言ったらわかる？誘うなら太宰にしてくれ。今度連れてきてやるから。」

……後者は無視を決め込むとして、Aの訳の分からない発言に再度眉を顰めながらも思わず復唱する。

「俺が、手前に？」

そう問えばよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑みで頷くA。
…おそらく今、こいつに向けている俺の顔は酷いことになっているのだろう。ちなみに現在の心情を一言で表すとこうだ。何言ってんだこいつ。

「今の君の心情を当ててやろうか。是非一緒に行かせてくれ!!」

「何言ってんだこいつ。」

阿呆にもわかるよう、口に出して言ってやれば〝君はそれしか考えていないのかい？少しは語彙力を鍛えたらどうだ〟と、肩をすくめられた。

…やっぱりバレてんじゃねぇか。

手前のそういう所が嫌いなんだ、と言えば〝ありがとう〟と返ってきたのでこいつを無視して自分の買い物をすませるべく歩をすすめた。

「ちょっ…其れは無しだろう!?お願いだから話だけでも聞いてくれ!!…中也?ねぇ中ー也ー!!」

…子供か。