105 ページ8
.
「あー………嫌になる」
手に布で巻き付けた日輪刀を、だらりと下げる。
鬼はいつも通りに斬れた。久しぶりの任務だったが何も支障はなかった。
だが、手と日輪刀を布で縛っていないと握っている感覚が一切ない。
不便なのは確かだが、そんな事どうでもよかった。
以前なら任務が終われば急いで実弥さんの元へ帰っていたのに。
今は任務が終わっても達成感もなければ、安堵感もない。
ただ淡々と鬼を斬るだけ。
「帰りたくないなぁ」
ふと、竈門くんの屈託のない笑顔を思い出して自然と足が動く。
彼は目を覚ましたのだろうか。我妻くんと嘴平くんの意識が戻った事は確認出来ていた。
少し、様子を見に行ってみようか。
幸いにもここから蝶屋敷は近い。
任務も早めに終わったし、もうすぐ夜が明ける。
気を紛らわせに少し寄り道をしてみよう。
ゆっくりと布をほどいて、日輪刀を鞘におさめる。
久しぶりに足取りが軽い気がした。
あの日から実弥さんを一目見るとこすら出来ていない。
怪我をしていないだろうか、ちゃんと眠れているのだろうか、そんなことを考えるとキリがない。
本当にもういっその事、兄さんの元へ行ってしまおうか。
またドロドロとした嫌な感情に飲まれてしまいそうで、深いため息を吐く。
まだ実弥さんは俺を軽蔑しているだろうか。
どうでもいいと、無関心の対象になるくらいなら、いっその事めいいっぱい嫌われたい。
俺という存在を、大きな存在として実弥さんの心に刻み付けられるならどんな形でも構わないと思った。
今の俺には、朝日があまりにも眩し過ぎる。
.
324人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朝ギ(プロフ) - ゆきねこさん» コメントありがとうございます!更新遅くなってしまい大変申し訳ないです…これからも楽しく読んでいただけると嬉しいです! (7月13日 23時) (レス) id: 6f172a3ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ - ふぁっ面白すぎて一気読みしました!更新待ってます! (2023年4月14日 9時) (レス) @page16 id: 0a7ce356e9 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - ナハハさん» コメントありがとうございます!なかなか錆兎との絡みが少なく試行錯誤していますが、楽しんで読んでいただければ嬉しいです! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - あいせさん» コメントの有難いお言葉ありがとうございます!更新頑張っていきます! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
ナハハ(プロフ) - 私の推し(錆兎)の小説が少なかったのでこんなにも面白いお話に巡り会えてとても嬉しいです!応援してます! (2022年12月7日 11時) (レス) @page9 id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朝ギ | 作成日時:2022年6月14日 22時