41 ページ42
.
砂埃がおさまり、ようやく視界が晴れると、今まで見た事がないほど焦った様子の実弥さんが俺を支える。
「もういいA！」
刀を握る力がない。
着ている病衣を破いて手と刀を強く結び付けた。そうでもしないと全く握れなかった。
「さ、ねみさん、俺はこんな状態でも全く痛み感じることが出来ないんです」
「A！」
刀の擦れる音が響く。
実弥さんの顔が近くにある。
彼の表情は見た事がない程、とても動揺していた。瞳には血だらけの自分が映っている。
あまりにも無惨な姿だった。
「…っ、！」
隙を見て、首を目掛けて足を上げる。
実弥さんは刀から片手を離して防御をしたが、鈍い音がした。
俺の履いている靴には威力を向上させる為に鉄板が仕込んである。
まともに受けた実弥さんの腕を折ってしまったのではないかと血の気が引いた。
一瞬で正気に戻る。
「あ、実弥さ…っ、」
攻撃の手をやめて実弥さんに手を伸ばそうとした突如、身体が全く動かなくなり、まるで糸が切れた操り人形の様にそのまま地面へと倒れ込んだ。
息が上手く出来ない。頭がクラクラする。おかしい。
「A！」
そんな俺を実弥さんは軽々と抱き上げる。
ああ、だめだ。
俺の血で実弥さんが汚れてしまう。
俺の身体は、ただ呼吸をすることに必死だ。
「余所見なんかしてんじゃねェ…」
ああ、それであんなに動揺していたのか。
実弥さんは何も悪くない。久しぶりに頭を撫でる彼の手が温かく、安心する。
実弥さんの白い羽織りが、俺の血で染まっていた。
きよちゃん達から受け取った手拭いで実弥さんが丁寧に顔の血を拭いてくれているのに、指の一つでさえ動かせない。
腹部の出血を止めたいが、呼吸が乱れて止血すらも出来ない。落ち着け、大丈夫、大丈夫。
胡蝶さんの珍しく、焦りと怒りの混じった声が遠くで聞こえてくる。
俺は実弥さんの腕の中でそのまま意識を手放した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 475人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
303(プロフ) - 実弥さんも夢主もめっちゃ好きです！不器用でとっても優しいところ可愛いすぎます(^^)これからも応援してます (2021年1月4日 4時) (
レス) id: e43609f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり(プロフ) - やばい面白いですね(語彙力)めっちゃ好きです！！ (2020年12月1日 14時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝ギ | 作成日時：2020年11月1日 22時
