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『なあに？どうしたのよ』
笑みをはらんだ柔らかい声音に少しだけ心が和らぐ。
落ち込む原因も彼だけど、へこんだ気持ちをすくい上げてくれるのも間違いなく彼で。
「別に何でもないですよ」
『あ、そ？じゃあ行くから』
何気ないやりとりに幸せを感じてしまう。
進展はなくても一時感じた絶望は遠い。
始まったばかりなのだから、これぐらいがちょうど良いのかもしれない。
「Aって今度の水曜は1日仕事？」
「水曜ですか？ちょっと待っててくださいね」
水曜日は確か早めに仕事が終わる日だったような……あれ、この日って。
スケジュール帳には仕事が昼過ぎには終わることともう一つ。
カズさんの誕生日だということがメモしてあった。
今までカズさんの誕生日当日はお友達と過ごしていたから、私はその後にプレゼントを渡すぐらいしかしたことがない。
もしかして今年は二人で過ごせるの？
「カズさんの誕生日ですよね？その日は昼過ぎには終わります」
「おっ！じゃあ祝ってよ」
「……え？」
あっさりと二人で過ごす約束を取り付けられて拍子抜けした声が出る。
「は？嫌なの？」
「ま、まさか！」
その声を聞き咎められて、慌ててぶんぶんと首を横に振って否定。
「じゃあ決まり。飯は俺が用意するから」
「え、私作りますよ？」
「それは嬉しい申し出だけど、お前仕事なんだから無理すんなよ」
ぐぬぬ。作りたい、けどカズさんの言う通り仕事だからあんまり時間に余裕はない。
「……はぁーい」
「ふっ。不服そう」
「だって」
「それ以外の所で協力してもらうつもりだから」
「はい！ケーキ買っていきますね！」
「はいはい」
嬉しすぎてへらへら笑ってしまう私のおでこをカズさんがつつく。
「楽しみなのはわかるけどちゃんと仕事しろよ？」
「分かってますよ！」
そんな返事をしていてもにやけてしまうのは仕方がない。
だってこれまでとは違う事を許してくれるんだから一歩前進だよね？
楽しみだな、プレゼントも買わなきゃいけないよね。
「ああそうだ、俺ん家でやるからね」
浮かれていた私にカズさんがさらっと爆弾を落とす。
「…え？」
「友達に手伝ってもらって掃除もしたし。大丈夫だから」
「でも、」
私がカズさんの部屋に行きたくない理由はもう話してある。
だからこそ掃除をした、処分したって伝えてくれるんだろうけどやっぱり行きたくはない。
「協力してって言ったろ？」
画面で見るような綺麗な笑みに退路を断たれた。
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紫苑(プロフ) - りえさん» リクエストありがとうございます。『ハラグロなふたり』の続きですね。鋭意創作中ですので今しばらくお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。赤菊の君の人気ぶりにびっくりしてました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ゆっこさん» リクエストありがとうございます。潤くん視点のお話書かせていただきました！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - mihoさん» リクエストありがとうございます。Lapis lazuliの続きですね！承知しました。ただいま創作中ですのでしばしお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - るきさん» リクエストありがとうございます。『赤菊』の翔さんサイドを書かせていただきました！大野さんのお話はもうしばらくお待ちくださいね。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年1月23日 20時
