あら、ご機嫌よう【薬屋のひとりごと】

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「韋颯さん」
『？猫猫？どうかした？』
「韋颯さんの生まれは西ですか？」




思い切って韋颯に訊こう。
恐らく韋颯は同郷の者、玉葉さまとは昔からの知り合いだろう。




『ええ、私の生まれ……というより翡翠宮に勤める侍女は猫猫以外は全員西の育ちよ。玉葉さまのお父上が侍女を選ばれたのよ。みんな、そのうちの1人』
「そうなのですね」



確かに、愛藍は異国の血が混ざっているのかとても背が高かったり、貴園は髪や目の色素が薄い。桜花は茘の血が濃いのか、一見見た目は茘人だが水を必要以上に節約するなど戌西州出身特有の仕草がある。
だが、韋颯は桜花よりは茶髪だが、中央での生活様式に慣れているようであった。



「韋颯さんは中央に何回か来られたことはあるのですか？他の方よりこっちの生活に慣れているようでしたので」
『“郷に入っては郷に従え”……東にある島国の言葉だそうです。家は商いをしていましてね。古くから商売をしている家でしたが、叔父や家督を継がないものは積極的に遠い場所に行っていました。
それで、この言葉です。その場所に行ってはその土地の言葉を使い、所作も合わせる。そうすることで円滑な商売ができます。……母にずっと教え込まれました』



珍しい。
良家の男子や女子はその家を手伝い、家のために結婚をする。つまり家の近く、もしくは結婚した家からはあまり離れない。西だからだろうか。
家から積極的に離れるというのは、初めてきいた。




『玉葉さまとは幼い頃から一緒に遊んだりしていたの。歳も近かったから』
「それで現在も仲がよろしいのですね」
『ええ』



韋颯はにこ、と笑う。





その笑みに猫猫は、どこかで見覚えがあった。

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