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最終話 ページ50

銀時の懸念は、新八が体調不良なことによって
Aが今夜まるっきり1人(と1匹)になることだった。

銀時は出る前定春に、留守は頼んだぞ番犬いざという時は得意のガブリッとひと噛みしてやってくれやと言い聞かせて自分がガブリっとされていたり。


しかし今のところは平和そのもので、しいていうなら普段の賑やかさが嘘のように
今の万事屋は静かだ。

お風呂から上がってきたAは、餌を食べ終え丸まって眠っている定春をひと撫でし、
切り忘れていたテレビを消そうとリモコンを持ち上げる。

『今日は夜空に見事な満月が浮かんでいますね。
やはり満月といい思い浮かべるのは竹取の物語。

きっと、月から使者がかぐや姫を迎えに来たのも、こんな満月の美しい夜だったことでしょう』

するとそんなアナウンスと共に、夜空の様子が映し出されていて手を止めた。
扉のしまった和室にAは目を向ける。その先に続くのはベランダだ。

「どーせ暇だしナ、ちょっと見てみるアル」

和室からベランダに出る、夜風が湯上りで火照った身体に心地よかった。

「見えた! ちゃんとまんまるアル」

ここからでも月はよく見えて、Aはベランダの柵に手をかけて身を乗り出しながら
ただ月を眺めていた。

そうしていると、“竹取物語” テレビで流れていた声を思い出す。
Aも、かぐや姫の物語は知っていた。

かぐや姫は、自分に迎えが来ることを、帰るべき場所があることを分かっていて
けれどそれは、お爺さんお婆さん、ここでできた大切な居場所と別れを告げることだとも
知っていて。

こうして月を見上げるたび涙していたという。

そして、来るべき日が来た時には
悲しみ、また涙を見せながらも還っていったのだ。

こんな風に美しく、けれど見るものにどこか畏れを抱かせる満月に。


私はかぐや姫じゃない。

でも帰らなくてはならない場所がある。
手放さなくてはならない居場所がある。

あの人は月の使者じゃない。
けれど私を迎えにきて 連れて行く、唯一の男。


なら私の来るべき日は―――今。


「……なんてネ」


そう首を振ったAは、体の冷えを感じ
そろそろ部屋の中に戻って、少し早めに寝ようと決める。

これ以上外にいて風邪なんか引いたら帰ってきた銀時に怒られてしまう。




「A」

だからその声を、嘘だと思いたかった。



「迎えに来たよ」



Aにとって唯一の
全てを支配する

兎は月夜に舞い降りる。



「神威」




続編【7】に続く

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設定タグ:銀魂 , 神威 , 成り代わり   
作品ジャンル:恋愛
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ぽてうさ(プロフ) - ゆるさん» ありがとうございます!!書いててよかったってなる嬉しいお言葉です(*^^*)近い内に続編も公開予定なので少々お待ち下さい! (2020年5月2日 11時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すっごく面白いです!早く続きが読みたいです!更新頑張って下さい!応援してます♪ (2020年5月1日 11時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - ついに総悟さん行動にでました(°口°)こちらこそありがとうございますです_|\○_ 作者としては優しい沖田総悟を書くのが難しくて苦労してます笑  (2020年4月7日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 総悟ぉぉぉーーーーーΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)すみません荒ぶりました← 何だろう…何か…もう…ほんとありがとうございます(((語彙力 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - 至恩さん» 久しぶりとなってしまった更新で、こんなコメント貰えるなんて本当に嬉しくて続きを書くモチベがぐんぐん湧いてきます!ありがとうございます(●´ω`●) (2020年3月14日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2019年2月6日 19時

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