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第187話 ページ48

僕の号令と共に結界が割れ、男士たちが走り出す。
結界が無理矢理壊されたことで印を結んでいた手が弾かれるが、すぐに新しい札を取り出して鬼に投げつけ、もう一枚の札を口に咥えて印を結んだ。
両手で三角形を作ると、鬼の背中に張り付いた札と、僕が咥えた札が淡い緑色の光を帯びる。

これは対象の霊力を吸い取る術で、札が取られるか、印を崩さない限り効果は続く。接着剤も何もつけていない札は、不思議と鬼の背中から外れる様子はない。
少しずつ、鬼と化した睡蓮たちの霊力が流れてくる。その霊力は二代目のものと比にならないほど濁っていて、これをすべて受け取るのかと考えただけで気分が悪くなってきた。


「ギエアアアアア!」

「シャアアアアア!」


さっそく髭切と膝丸が暴れている。その激しい殺意はこちらにも響いてきて、後ずさりしそうになったがなんとか耐える。
熱くなるのはいいけど、うっかり首を落としたりしないだろうか、とハラハラしながら見守るが、ほかの男士とも上手く連携できているので一安心だ。


「アターック!」

「これが突きだ」

「そらよっ」

「見え見えだ」


やはり鬼は僕を狙っているのか、男士たちの猛攻を受けながらもこちらへ迫って来る。
それを加州や骨喰が攻撃し、一時的に鬼の標的を買って出ては太鼓鐘たちが攻撃を重ねた。

これだけ練度の高い男士が揃っているというのに中々倒れない辺り、霊力だけは潤沢だったことが窺える。
そういえば遡行軍での実験の最中に鬼化した人間は、一人だったのに中々倒せなかった。
まぁこちらと比べて戦力が少ないというのもあったのだろうが、そう考えると今彼らが戦っているのは、それほどまでに強大な力を持っているとも言える。

彼らの負担を減らすためにも早く霊力を奪い切らねば、とさらに意識を集中させるものの、僕が受け入れるには奴らの霊力は重すぎる。
先ほどの結界でかなり霊力を消費したとはいえ、この速度ではいつまでかかるかわからない。

あれだ…二代目の霊力が唐揚げだとすると、こいつらの霊力はカルビだ。いや、カルビに例えるとカルビに失礼だ。古い油でビタビタにした肉と言い換えよう。
そんなものを無理矢理食べている感じがする。

きっついな…と額に滲む冷や汗に気づかぬふりをしていると、突然肩に何かが触れて、驚いてそちらを振り返る。
すると、先ほどよりどこか覇気のなくなった元帥が、僕の肩に手を乗せていた。


「貴様一人では厳しいだろう。助太刀する」

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月2日 0時

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