九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ12)

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第104話ページ12

確かに僕が薬研たちに対して善戦できたのも、僕が刀剣男士の血を引いてることに他ならない。
彼らが僕をすんなり受け入れたのだって、僕から同種の気配がしたから普通の人間より絆されやすかったのだろう。
けれど…

「一応、誰かはわかってるよ。
個体が識別できてないだけで」

「ほう。それは一体誰なのだ？」

「…教えない。この本丸の同位体に、気まずい思いさせたくないから」

そう言って目をそらすと、意外にも三日月はそれ以上追及してこなかった。
…さすがに、父親の刀剣男士が誰か明言してしまうと、この本丸の同位体との関係が気まずくなってしまうかもしれない。
もしくは、気を使わせて父親のように振舞わせてしまうかも。

それはなんとなく嫌だ。彼らと仲良くなりたいのは本心だけど、僕は父親の代わりなんていらない。
というか、もしそれでここの男士と親子のような関係を築いてしまったら、本当の父親が現れた時に修羅場になりそうだし…

三日月も納得してくれたようだし、話を戻そう。

「それで、今後について話し合いたいんだけど…長義は？」

「呼んだかな」

「うおっ…ビックリした。いつからいたの？」

いつもそばにいたはずの相棒の姿が見当たらず、視線を彷徨わせると、障子の奥から目当ての人物がひょこりと顔を出した。
所在を尋ねた途端に現れたものだから驚いていると、どうやら本丸を発つところだった椿さんに声をかけられ、こちらに様子を見に来たらしい。
それまでは、目を覚ました元重傷者たちに山姥切国広や五虎退と共に事情を説明していたとのこと。

…よく国広と一緒に行動できたな。
いや、できていたのかはわからないけれど…とりあえず五虎退が可哀想だ。あとでお菓子でもあげにいこう…

「回復した男士への挨拶回りもあとでするとして…一旦、これからやることをまとめようか」

僕が意識を失っている間に椿さんがいろいろやってくれたみたいだし、その辺のすり合わせもしておきたい。
ということで、三人で顔を突き合わせて話し合い──
…と、思ったんだけど。

「……まずは腹ごしらえが先だな」

「……ごめんなさい……」

ぐぅう、と情けない音を響かせた僕のお腹に、二振りが苦笑する。
もうお昼を過ぎている頃だし、朝ごはんも食べ損ねたので仕方ないんだけど…
もう少しタイミングを考えてほしかったな、僕のお腹よ。