第13話 ページ15
「真名を教えたが最後…即刻、その首と胴が離れることになるかもしれないぞ」
「いいですよ？それで一番困るのは、結局のところあなた方ですし。
だって、僕がいなくなったら、この本丸はどの道解体されちゃいますからね」
無邪気に明るく笑ってみれば、こちらを睨みつけていた国広も、やがて観念したように息を吐いた。
一歩後退して距離を開けた国広から、もう突き刺さるような殺気は出ていない。
「うむ。どうやら決まったようだな」
朗らかに口元を緩めた三日月に頷いて、ようやくすべてがまとまった。
「では、この者を我らの一時的な主に据え、この本丸の存続に尽力してもらおう。
初代が帰還次第、その座は即刻明け渡してもらう。
そして、その時を待たずに我らとの約束を反故にした場合は、
この者の真名を以て償わせ、
同時に俺の首も落としてもらおう」
「いやだから、それじゃ意味ないんだって…」
正式に宣言したと思えば、いらんことを付け足しやがったぞこのじじい。
三日月の首を賭けないために僕の真名を差し出すというのに、両方採用してどうするんだ。
「なぁんでそこ頑なになるかなぁ…僕の真名だけで十分でしょ」
「いやいや。お前を引き入れようと決めたのはこの俺だ。
この本丸の総隊長である俺が、判断を誤って仲間に害が為されたとなれば、責任を取るのが務めというものよ」
「だからって…」
「ちなみにだが。
これは、お前たちを受け入れる条件でもあるぞ？
これが呑めないのならば、もうお前たちに肩入れする理由はないなぁ」
「え"っ」
とんでもない掌返しだ。あまりにも鮮やかすぎる。
僕たちを受け入れる条件と言われてしまえば、それ以上の反論は出来ない。
どう考えてもこちらに不利はないし、むしろ三日月の方が危うい立場だ。
「三日月は、こうなったら決して覆さないぞ。諦めろ」
「はぁ…もう、わかったよ。つまり、僕がそうさせないように態度で示せばいいんでしょ」
「はっはっは、そういうことだ」
国広の遠くを見つめる目で察した僕は、がっくりと肩を落として項垂れる。
こんな自分に不利な条件を相手に呑ませて、一体何が目的なのやら。
腹の底が見えない不気味さに唇を尖らせ、開き直った僕はてきぱきと指示を始めた。
「それじゃ、一期一振と前田藤四郎と薬研藤四郎は本丸中にこのことを通達。
それ以外はここに残ってください。僕の真名を教えますんで」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
