茜の蓬莱蕉 (ページ37)

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「…我が名において、霊力の揺らぎが確認されなかった事を証明する」

検査を終えてすぐ、神妙な面持ちの審神者が一礼する。

今回の検査に協力してくれたのは、私よりもいくつか歳上であろう男性の審神者。

政府の面々はその言葉にどよめいたものの、やがて必要な手続きに取り掛かり始めた。

加州清光と顔を合わせることが出来たのは、日が沈む頃。

「主」

数日振りに見る彼に変わった様子はなく、私は胸を撫で下ろした。

「……帰ろう」

差し出した手を、加州が取る。

政府の管轄する建物から出て、本丸へと繋がるゲートに足を踏み入れたとき、加州はやっと口を開いた。

「もう、元の本丸に戻っちゃうんだよね」

その声は、まるで私に聞かせないようにしているかのようにか細かった。

独り言のようなそれを拾っていいものか分からず、返答のタイミングも逃してしまった私はただ歩を進めた。

「！」

本丸の大門に辿り着いたそのとき、袖を引かれる。

「……主、本当にもう…」

彼が心配しているのは、霊力の供給源である私がこの本丸からいなくなることだろう。

しかし、彼のいない間に事は良い方向へと動き始めていた。

「…加州、実は貴方に喜ばしい知らせがあります。もうこの本丸は主無しではなくなる」

「へ…？」