茜の蓬莱蕉 (ページ11)

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「ああ…っ言葉遣いとは対照的になんて冷たい氷のような態度…ありがとうございますッ！」

最早一周まわってこちらなど眼中にないようにすら思えるが…

とはいえ、彼を蔑ろにするわけにもいかない。

「亀甲貞宗様」

「よしてくれ、もっと強く─────」

「先程から」

名前を呼んですぐに遮られたのを、仕返しをするように声を被せる。

やや低くなった声に目を丸くする亀甲貞宗と目を合わせ、再度口を開いた。

「……貴方様は私を主と呼びながら、幾許も私が言葉を紡ぐのを許してはくれないのですね」

「ご主…」

「差し出した手も、ついぞ取っては下さらない」

言って手を引くと、彼が追うようにして私に手を伸ばす。

「あ…っ」

「亀甲貞宗様」

その手を捕まえてから、敢えて感情を消した声色でその名前を呼ぶ。

「…貴方様は私に、何を望んでおいでなのですか？」

彼とまともに話そうとしては、おそらく永遠に会話などできない。少々強引なやり方だが、彼のペースに合わせて、まずは聞く耳を持ってもらわなければ。

私は掴んだ腕を離してから、こちらを呆然と見つめる亀甲貞宗を見据えた。

「どうぞその口で。……お教え下さい」

亀甲貞宗はしばらく呆けたように私を見つめていたけれど、少ししてがくりと項垂れる。

「あ…ああぁっ…！」

声を震わせるその姿に、少しばかり高慢だったかと反省しかけたとき。

「…………新しい…ッ！！」

頬を紅潮させながら身体を抱く様子の彼を一瞥して、ふと笑みを漏らす。

「申し訳ありません、彼と対話ができる気がしないのですが」

「ごめん……」

さぞ目の笑っていないだろう顔で伝えると、加州清光は申し訳なさそうに手のひらで顔を覆った。