私と兄とお友達【USSS】

68話(うらたぬき) ページ20

どんな状況下でも勝ち負けを気にしてしまう。この時点で負けていたんだ







救急車の中、君はずっと坂田の怪我をしていない方の手を握っていて



お兄ちゃん、と言いながら泣いていた



坂田じゃなくて俺が一番に行っていれば、坂田はこんな怪我をしないで、君はこんなに泣かなくて済んだんじゃないかって



そんなどうしようもない『もしも』の世界を考えていた



それくらいには冷静でいられた自分が不思議だった





2〜３週間は右手を使えないけど、問題は無い



ちょっと血が出すぎているので大事をとって入院



診断結果は俺とAで聞いた



問題は無いと言われても、彼女にはなんの安心材料にすらならなかったらしく寝ないでずっとそばにいた



さすがに身内じゃない俺は夜中になると帰れと言われ、それに従うしかなかった



次の日の朝イチで病院に行くと、昨日と全くポーズの変わってないA



たしなめてみても、一向に動く気配はなくて




下のコンビニで軽くヨーグルトなんかを買ってテーブルに置いて帰った



そしてまた次の日の朝



彼女のポーズはまだ変わってなくて、ヨーグルトも飲み物も、全てテーブルの上に放置されたままだった



さすがに顔色も悪いし、志麻くんとセンラに頼んでむりやりAを外に出す



少し抵抗したが、睡眠も食事も取ってない体での抵抗はゼロに等しいものだった



うらた「一回家帰ろう」



「…やだ…そばにいたい…」



うらた「…坂田が元気になった時、そんな顔じゃ心配かける」



「…」



うらた「絶対に大丈夫だから。…もうこれ以上無理しないで…」



「…」



少し納得のいかなそうな顔をしながら静かにうなづいた



早く休ませてあげたかったので、家まではタクシーで帰った



タクシーの中でも彼女は、ずっと不安そうな顔をしていた

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