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それは誰しもが予想しない展開だった。
自分でも理解するのに時間がかかってしまった。だからお願い。誰もこっちを見ないで。
「A?なんで泣いてんの?」
『っ!泣いてない、です!』
「泣いてんじゃん。…嗚呼。誰も救われなかったから?哀しい最期だった筈なのに一番彼を楽にしてあげる方法がアレだったから?」
ぐさり、ぐさりと突き刺さる言葉に仕切りに涙がこぼれ落ちる。乱歩さんは落ち着いていて、私を慰めるような言葉は一切掛けず、淡々と私の話をするのだった。
『っ、だって、犯人の二人が何処か谷崎君達に重なるし、なんだか、切なくて』
「そりゃあ小説世界だし。ねぇポオ君」
「わ、吾輩に振るであるか?!」
違う、理解しろ私。落ち着いて。これは嵌められている。
小説に入る前、私に肩を貸してくれたと思っていたあの行動は無理矢理にでも私を小説に入れたかったからだ。
私が泣くのを推理して作家さんに頼んだんだ。
本当、何がしたいのこの人は。ずっと彼の手の内で踊らされている気がする。
パチリとあった私の苦手な瞳は、やけに熱を帯びていて高揚しているようだ。それから乱歩さんはソファに座って涙を拭う私を上から覗き込んで、優しく涙を掬った。
「まぁねぇ、同情するなとは言わないよ。確かに悲しい事件だったし。僕が居なければ迷宮入りだったかもしれないね」
『そう、ですけど。』
ぺろりと涙を舐めた後、ほんとにしょっぱい。と零してから私の頭に手を置いた。
一息ついてから体重を乗せられて頭が重くなる。
首が痛い
「それと君のあの洋服似合ってた。結婚式の話をしたのは君が初めてだし。いや、初めてで良かった。二人きりの時間が終わっちゃったのは悲しいけどさ」
「後、あの時の、勘違いしてくれていいよ。…そういう事かもしれないね?」
ふっと頭が軽くなったと同時に勢いよく見上げる。
彼はもう背中を向けて、作家さんに手を振ってから部屋を出てしまった。
涙が引っ込んで赤くなった目を二回程擦って瞬きをする。
勘違いしてくれていい?あの思わせ振りな言葉を?嗚呼もう本当に。
わざと小説に入れられて、変なこと言われて、泣かされて。そうやって無様で滑稽な私を楽しんでいるんだ。
「嗚呼乱歩君…行ってしまった…。」
『…作家さん。どうにかして乱歩さんに一泡、吹かせたいです』
「其れは吾輩がいつも考えているのである…だが乱歩君に一矢報いるなど吾輩には…」
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時