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*
「江川君…素敵な人だったのに。随分惚れ込んでいたそうよね」
「そうだな、まぁ俺はジサツとしか考えられんが」
『そのお話詳しく聞いてもいいですか?』
市警が来た頃、私達招待客はロビーへと移された。
きょろきょろ辺りを見回していると、あちらこちらで新郎の話が聞こえるが、どうも皆してジサツだなんだと話しているのだ。
「よく彼が話していたんだ。"僕は蘭子を愛しているけど彼女はそうじゃない、望まない結婚だったんだ、僕はずっと失恋をしている"ってね。」
『なるほど…財閥同士の政略結婚だと聞きました』
「嗚呼。蘭子さんに一目惚れしたのに上乗せして彼女の会社ごと合併したそうだね」
「愛故の行動ね。江川君、突飛な行動も多かったから、離婚されてしまう前に自ら命を…」
けれども乱歩さんは之は殺人と云った。
ジサツする動機も十分な新郎に誰が手を…。それに乱歩さんは一体何を?
「あの…探偵さんのお連れ様ですよね?市警の者です。遺書が見つかりました。」
『!、有難う御座います。』
袋に閉じられた遺書を読むとそこには
妻が美しすぎた事、蘭子さんには他に想い人が居る事、本当は自分ではなく、自分をこんなにした妻とその想い人を式中で殺害しようとしていた事が書かれていた。
もう目の前の市警の人は目にしたのか辛そうな顔をしている。
『これは……。筆跡鑑定はまだですか?』
「はい。ですがスピーチの原稿が手書きでして。比較しても見るからに同一人物の筆跡なのです」
『そうですか…あの、私の連れ、名探偵の彼は何処かご存知ですか?』
「それでしたら新郎の控え室にいらっしゃいましたよ」
軽く礼を言って駆け足で楽屋を探す。
之の何処が殺人なんだ。新郎が自分自身を殺したから?いや、乱歩さんはそんな回りくどい云い方はしない。
こんなに切ない結婚式があるのか、乱歩さんはどこまで知っているのか。
無性にあの翠の瞳を覗き込みたくなった。
*
『乱歩さん!……もう遺書、読まれました?』
「うん、この部屋にあったからね」
『……最初からこの部屋に遺書があったことがわかっていたんですか』
「いや、別のもの目当てさ」
座席の回る椅子に足を組んで、何処からかちぎったのか蘭の花をくるくる回している。
『別のものって?それにどうしていつもみたいにやらないんですか。もう私、なんて言えばいいか』
「一つ目はその机の二番目の棚にある物、二つ目は」
「君だ。」
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時