手の平で転がされすぎてる【江戸川乱歩】

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『私？ですか、？』


「そうA。薄々感ずいていると思うけど此処はポオ君の異能である小説世界。脱出する方法は謎を解決するしかない。」

「ちなみに二番目の引き出しにあるのは本当に式で使われる予定だった玩具の銃。最後の証拠品って訳」





『そこまでわかっていて…いや、犯人も最初からわかってたんでしょ。どうして解決させないんです？』


少し詰寄ると花を回す手を止める。
以前与謝野女医から乱歩さんの眼鏡が無くて少しトラブルがあったと聞いた。もしかして今、眼鏡がない？
でもそんなの…。


「そう、それが君のせいだ。君のせいで解決出来ない！いや、解決したくない。」

『どういう事ですか？…どんな真実でも受け止める覚悟は』




「だって解決したらここから出なくちゃならないだろ、せっかく君と2人きりなのに勿体なくてありゃしない。それにわざわざ結婚会場を舞台にして貰ったんだよ？そんなの、ねぇ？」













は？




ぽたりと蘭の花が床に落ちる。
堰を切ったように乱歩さんの口から溢れ落ちる言葉は想像もつかないものだった。

何それ。


「まぁでも？君はもう出たいみたいだし、僕の推理も聞きたくてたまらないらしいからね！よしじゃあその玩具持ってきて！式場内行こうか」


そう言って乱歩さんはぴょーんと軽く椅子から降りて、大股で部屋を出てしまった。
全部分かってるのに解決しないのも、上機嫌なのも、全部全部私と居るからって事？何、その急な思わせぶりみたいな。


いやまぁ、前々からそういう意味深、みたいな含みのあるような言い方してきたけど、



「ほら疾く〜！」
『あ、…は、はい！』


理解も出来なければ回りもしない頭をどうにか動かして、引き出しを引いた。
本当に、訳が分からない。










＊










「そうそう、犯人は新婦だろ？」




招待客がジサツだなんだと喚く中で静かに、冷静な声で辺りを鎮めた。兄に肩を抱かれている新婦の蘭子さんはやはり美しくて少し怖い位の人だ。


「探偵かなんだか知らないけど遺書まであって、しょっちゅうジサツを仄めかしていたんだろ？幸せの絶頂の中ﾀﾋにたかっただけに違いないだろ！」


眉間に細かく皺を寄せて怒鳴り出す例のお兄さん。

なんだか、妹が疑われてる状況で怒るのは勿論普通の事だが、仮にも家族になる予定だった新郎にそんな言い方あるだろうか。


疑問を浮かべた私に気が付いたのか、またにやりと乱歩さんが笑った。
嗚呼、之はスイッチが入った。

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