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甘味処から出るころには、総悟は「じゃあ俺仕事があるんで……」と足早に去ってしまった。要するに逃げてしまった。
2人で店を出たところで、Aは銀時に向き直った。
「で、具体的に何が知りたいわけ?銀さんは。あ、知りたいのは秋彦か」
「……じゃあ早速。お前、最近なんかあったろ。それを秋彦が気にして気にして夜も眠れねえんだとよ」
「全く秋彦は。心配性なんだから。私のことをいつまでも子供だと思ってんのね」
失礼なんだから、と頬を膨らます。
そして「そうねぇ」と少し考えてから「あ」と何か思いついたような声を漏らした。
「あれかな……?」
「なんだ、心あたりあんのか」
「うん。だから……」
Aは銀時の手を唐突に掴む。銀時が驚く暇もなくAはその手を引っ張った。
「お、オイ!!」
「いいから!!ついてきて!」
そう言って連れてこられたのは駅だった。Aは手慣れた様子で2人分の切符を買い、慣れた足取りでとある電車に銀時を引っ張りこんだ。
「どこいくんだよコレ……」
「いいからいいから。どうせ暇なんでしょ?―――会わせてあげる。秋彦が言ってるだろうし知ってるんでしょ。私の大切な人に」
しばらく電車に揺られて、郊外の駅で降りた。そこからまた乗り換えて、とある小さな駅に降りる。
そこは高い建物なんて無い、山の近い空気の綺麗な場所だった。日はもう西へ傾いており、山肌を琥珀色に焦がしている。
スタスタと足早に進むAはずっと銀時の手をはなそうとしない。
「ついたよ」
Aがそう小さく言う。
見ると、そこには古びた小さな家があった。
Aは扉を開くなり中に大きな声で呼びかける。
「ただいま〜!」
玄関に入ってすぐ隣にある台所と、2部屋か3部屋くらいのシンプルなつくりの家だった。
Aの声に返事は無く、中はしんと静まり返っている。台所の窓から射す日の光が部屋と台所を隔てる襖を黄色く照らしている。
照らされた襖をAが開くと。そこには、病人と言うにはあまりに美しすぎる男がそこにはいた。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時