ベルモットカシス《Takuya side》 ページ16
江「そんなにみんなの理想にならなくていいんだよ。そのままの千里でも大好きだって人はたくさんいるから。
俺が何千人分の愛してるを伝えるから。だから……」
「……泣かないで…?…君には、笑っていてほしいのに…」
いつの間にかこぼれ落ちていた涙を、千里は人差し指ですくう。
泣いてばかりの君が、笑ってほしいなんてよく言うよね。
「このままじゃ、だめだよね。……だめ、なんだよね。
進むことが正解かはわからないけど、進まなければ見えない世界があるんだよね。好きでいてもらいたいなら、歩き出さなきゃ、声を出さなきゃ、いけないんだよね。
なにもしないで好きでいてもらいたいなんて、そんなのは………」
『そんなのは………』
その続きが俺の耳に届くことは無かったけれど、決意したあいつの目はしっかりと前を向いていた。
「…………わかった。母さんと社長に話すよ」
江「うん」
「それから、みんなにも、ちゃんと伝える」
江「うん」
「……ぁ、りがとう。拓也がいて、本当によかった……」
江「……うん」
まだ不安そうに笑う千里を、引き寄せるようにゆっくり、ゆっくり抱きしめた。
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時