ラスティネイル《Takuya side》 ページ2
写真に切り取りたくなる綺麗な横顔を眺めてると、海の方を向いたまんま潮風に乗せて声が届く。
「…………好きだよ」
江「はいはい」
「すきだよ」
江「分かったって。どうしたんだよ」
「………好きなんだ。どうしようもないくらい………」
江「……なんで、泣くんだよ」
「わかんないよ。わかんないけど………嬉しくて」
江「……うん」
「でもなんか、……怖くもあって」
江「うん」
「幸せ……過ぎないかな………って…」
江「あほか。幸せになるために人ってのは生きてるんだろ」
「………拓也のたまに出るいい話はなんなの……ほんと……」
江「あぁぁ、泣くなって〜………」
「…………うぅ……う"ぁあぁ………」
何年も何時間も一緒にいて、彼女が泣く姿を初めて見た。
それは綺麗で、ぐしゃぐしゃで、子供のようで、大人っぽい、でもやっぱり美しい。そんな泣き顔と掠れた声だった。
江「俺と一緒にいるの……疲れた?」
「……そうじゃないよ。違う、むしろ楽しいよ。でも……」
江「そばにいるよ。お前がどれだけこっちを見ていなくても、空高く飛んで行ったとしても、俺はお前のそばにいる。
ここに来るまでどれだけかかったと思ってるんだよ。やっと隣に立ててるんだ。簡単に手放してたまるかよ」
ビー玉みたいな目を見つめそっと告げる。千里はその瞳を潤ませ呟く。
「こっちのセリフだよ……。拓也はいつもずっとずっと遠くにいて、私の方なんか見向きもしないでみんなに幸せと夢を届けてる。
だから今、怖くてたまらないんだ。カーテンコールが終わって夢から覚めてしまいそうで……」
江「夢なんかじゃない。俺はここにいる。お前の、千里のそばにいる」
「そ、そうだよね。………うん。拓也は、ここにいるんだ。私のそばにいてくれる」
江「そうだよ」
「ごめんね。………重い人は嫌いなんだよね」
付き合い始めて数年。……いや友達の頃から、千里はいつもかっこよかった。
外見はもちろんだけど中身が男前で、俺の可愛くない嫉妬にも笑顔で返してくれてたし、誕生日や記念日には必ずプレゼントを用意していた。
そんな千里が、弱気な表情をするようになったのはここ半年のことだ。普段の姿とはまるで真逆、立場が逆転したみたいだ。
江「………俺のタイプって知ってる?」
「え?カワイイ系で、ぽっちゃりで、よく食べる人?」
江「そう」
「私とは真反対だねぇ…」
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時