グラッドアイ《Takuya side》 ページ1
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「海だぁーー!!!!」
江「海に来て『海だー!』って叫ぶヤツほんとにいるんだw」
「だってやりたくなんない?こんなに広い海見てるとさ、大声出したくなるよ」
江「えぇー、そうかぁ?」
「試しに叫んでみたら?結構気持ちいよ」
江「んんッ、じゃあ………好きだーー!!」
「………てれる」
江「俺もやっててめっちゃ恥ずいわ。らしくないことした」
「だろうね」
江「………でも、なんでまた海?」
「気持ちいいでしょ?私ね、波の音とか潮風とか、波打ち際とか鳥の声とか、結構好きなんだよ」
江「へぇ……知らなかった」
「そりゃそうだ、外嫌いの拓也に言ったことないもん」
江「ふーん」
「あ、拗ねたw………」
からかうように目を細める千里。淡い空色のブラウスから細い腕がすらっと伸び、後ろで組まれた指の先は桜貝のようなピンク色。
波に反射する日差しがやけに眩しくて水平線を眺めた。
「いい天気だね。春なのにそんな風強くないし、むしろポカポカ陽気で眠くなってくるよ」
江「だなぁ。………あ、船」
「え、どこどこ?」
江「ほら、向こうの方」
「え、見えないけど………。……?!………反則です」
江「からかった仕返し。………!」
「仕返しの仕返し」
江「………反則です」
行ったり来たりする波の音が、俺たちの間の沈黙を埋める。それをぼうっと見ながらしばらく黙っていると、千里が不意に呟いた。
「拓也ってけっこう私のこと好きみたいだけど、私もけっこう好きなんだよ」
江「……何言ってんの、俺の方が好きだって」
「いやいや………ってなにこのリア充っぽい会話」
江「たしかに。高校生かよw」
防波堤に体育座りをして海を見ている千里。どこかの写真集を見ているみたいだ。
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時