ななじゅうに ページ24
しばらく待つが、それからアクションはない。もう一度声をかけようとした瞬間、顔の横から真っ白な腕が伸び、抱きしめられた。
「えっと、まふさん？どうしました？」
ま「……always with you」
耳元に囁きかけられたのはいつものかん高い声じゃなくて、ストンと胸に落ちるような落ち着いた優しい声。
ま「あの時の返事」
「……あぁ、あれかー。蒸し返すなよはずーい」
ま「僕はどこへも行かないよ。どこかに行くのはいつもAじゃないか」
「あはは」
ま「笑いごとじゃないんだけど……」
「同じところに立ち止まってられない性格なんだよ。反動ってやつ」
ま「それにしたってだよ」
「まふもたまには旅しなよ。引きこもってばっかじゃなくてさ」
ま「日帰りで行けなきゃ」
「飛行機に乗ってるだけで1日なんて終わるっつーの」
ま「…Aは、どうして世界を回るの。日本でも先生はできるよね？」
「……あー、ついにそれ聞かれちゃうかぁー」
ま「え、また隠しごと？」
「ん〜……」
ま「なんなの？気になるんだけど、教えてー」
腕を組み少し唸った後、彼はどんな表情をしているだろうかと想像する。変わってないようで大人びた顔。きっと薄い唇が一文字に結ばっている。
「……実はさ」
ま「なに…？」
「その前に離して？」
ま「やだ」
「やだか、そうか……」
ま「捕まえてないとすぐどっか行っちゃうからね」
「そんなこたねえけど。私はちょうちょか」
ま「似たようなもんだよ……」
なおも私の首に巻きついてるまふの腕を、ぽんぽんと叩きながら呟く。
「いつか君があの部屋から出て、もし世界を見たくなった時、いつでも案内できるようにって思ってさ」
【井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る】
元々全文は中国の思想家の言葉。日本に伝わってから後部分が付け加えられたそうだ。図書館で読んだ本のこの一説に、心を動かされた。まさに私のことだと。
昔はその空の青さだけが確かなものだと信じて疑わなかったけれど、この囲いの向こうに確かに世界はあると、私が本を見て想像するもっと先の、もっと上の、もっと奥の方があるってことを、思い知らされた。
私は逃げるようにその囲いから出た。そして世界のすばらしさを知った。だから大切な友達に、未だに井戸の中で声を響かせて歌っている彼に教えてあげたかった。
彼はもうとっくにたくさんの仲間を集め、外に出て、空よりも高いところにいたけれど。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年2月21日 4時) (
レス) @page41 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - コメントありがとうございます！言い回しに惚れられたなんて初めてで驚きです笑タイトル通り淡い色の作品にしたくて作ったので伝わってるみたいで嬉しいです！友達から始まる恋もいいですよね(^^)またどこかでお会い出来ることを願ってます！ (2020年6月26日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ(プロフ) - ななき。さん» 作者さんの言い回しに惚れました…。多種多様な色の中の一つを描いたような物語で思わず一気読みしてしまいました…。不器用な2人が周りの人達によって変わっていく姿を見て、友達って大切なんだなぁって思いました。これからも頑張ってください！ (2020年6月26日 19時) (レス) id: b0d67d134f (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます！感動していただけたなんてうれしい！はよくっつけ！ってなりながら書いてました笑 (2020年5月20日 19時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - すっごくよかったです！感動ものですね！泣きましたぁぁぁぁ (2020年5月20日 8時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年4月9日 10時
