歌唱部のお姫さま ページ27
志麻くんと分かれてルナさんの隣の歩く。歩く度にふわふわと長い髪が跳ねて、人魚姫と言うよりオーロラ姫のようだ。周りに蝶とか花びらとか舞ってそう。
「…ってかそれ何？」
ルナ「あ、これですか？軽音部の子から借りてきたCDラジカセだよ。歌うパートがあるから練習しようって。あとメトロノームとストップウォッチかな」
「重そうだね。持つよ」
ルナ「えっ？！いいよ申し訳ない！」
「なにそれw か弱い女子にこんなに持たせるなんてクラスのやつは何やってんだか」
彼女の抱えるダンボールを持つと彼女は「……ありがと！」と可愛らしく笑う。「いえいえ」と返してまた長い廊下を歩き出した。
「芝居は順調？」
ルナ「うん……」
「その声は順調じゃなさそうだね」
ルナ「実はあんまり……。歌唱部だから少しはやったことあるんだけど、お芝居はほとんどやったことなくて、ミカちゃん達は『全然大丈夫！』って言うんだけど……」
「そっかー。まあ可愛ければいいみたいなとこあるもんね」
ルナ「………」
「でもルナちゃんは真剣にやりたいんだ？」
ルナ「……そうなの！」
「じゃあ本読み手伝おうか？」
ルナ「……いいの？！」
「まかせて。これでも芝居、習ってたのよ」
ルナ「ほんとに？！」
「だから、覚えてるかはわかんないけどそれでも良ければ」
ルナ「ぜひぜひ！おねがい！」
「……あ、でも下園さんたちには内緒にしてくれる？」
きょとんと首を傾げるルナさん。美人や美少女より愛らしいという言葉が良く似合う。
「めんどくさいのは嫌いだからさ」
そこまで言って理解したのか、こくこくと頷いた。
「じゃあ放課後に」
ルナ「い、いいの？！放課後って、いつもバイトがあるって男子に……」
「あー、あれね？うそよ。体良く断る都合のいいうそ」
ルナ「うそ、なんだ。そっか……あ、じゃあ志麻くんと…？」
「あー、志麻くんは暇つぶしに付き合ってくれてるだけ。適当に海行ったりゲーセンいったり、あとは家の近くの公園行ったりとか。家に早く帰りたくなくてね。うちほら、あー……まあ、そんな感じ」
ルナちゃんは心配げに私を見つめる。幻滅でもされるかと思ったのに。
ルナ「あ、あの！」
「はい着いたー。じゃあまたね〜」
返事も聞かずに歩き出した。ピシパシと体にヒビが入る感覚がする。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
