【文スト】●依頼人だったんですけど●【太宰治】

〈22〉解決からの ページ22

『何だか私が原因でもあったようで・・・ご迷惑おかけしてすみませんでした。』


八つ当たりとはいえ、不本意でも私も関係してしまっていたから申し訳ない。


「あっはっはっはっ！」


えっ


おばちゃんが急に笑いだした。


「若いっていいねぇ。負けんじゃないよ？」


『え、いや・・・え？』


今度は私の目が丸くなっていると思う。


「警察には言わなくていいよ。これからはそんなことしないように言ってもらえれば十分さ。それと・・・」


肩に手を置かれた。


「大事な人は手放しちゃあ駄目だからね。後悔しないようにしな。」


そう言って仕込みに戻っていった。


負ける？


負けるって何だろう。


あの人と勝負って・・・。


負けってあの人が太宰さんの彼女になるってこと？


ズキン・・・


胸が痛い。


後悔しないようにって・・・


『あれ・・・もうしてる・・・』


あの人と太宰さんを二人きりにしてきたことを。


・・・こんな時に現れないでよ。


ふわふわ浮いてるシャボン玉を綺麗だと思えない。


・・・・・・・・・。


仕事しないと。


あの人におばちゃんからの伝言を伝えなくては。


酒置き場に戻り扉を開ければ、目に入ってきたのはあの人が太宰さんに抱きついているところ。


胸の中で何かが起きている。


痛くて気持ちが悪い。


女の人は何も言わずに私の横を通って居なくなった。


「おばちゃんは何て？」


『もうやらないように言えば、市警には言わなくて良い、と。』


「それならば大丈夫だね。もうこの店にもこないだろうし。」


あれ、太宰さんの笑顔が黒い気が・・・。


『何・・・したんですか？』


抱き着かれてたし・・・。


「助言をしたまでだよ。」


助言って・・・聞かないでおこう。


黒い笑顔がこわいから。


「それより、折角だから飲んで帰らないかい？」


いつものお誘い。


『・・・いいですよ。』


「はは、・・・え？」


そんな驚かなくても。


確かに飲みに誘われて了承したことはなかったけど。

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