Honey【葵ゆうた】

wink２０ ページ21

「俺は…俺は…Aちゃんの為なら引きます！」



え…？



どういうこと…？



私のために…？



「きっと…」









「Aちゃんは、アニキのことが好きだからっ…！」









ゆうた先輩の悲しげな叫びが響いた。



りっちゃんはそれをじっと見つめている。



そして、突然の言葉についていかない頭。
私は立ち尽くしていた。



「私が…ひなた先輩のことを…？…違う。」



違う。違うよ。



私が好きなのは、ゆうた先輩だけなのに。









なんで、こうなっちゃったんだろう。









私のせいだ。



私がひなた先輩のことを好きみたいな行動をするから。



「…ごめんなさいっ…！」



涙が溢れた。
ポタポタと靴の横に落ちる。



地面に染み込み、土の色を濃く、みずみずしくしていく。
それは涙が降り積もった私の心みたいで。



「…私が泣く資格なんて、ないでしょ。」



涙を必死にこらえた。



すると、また辺りに冷たい空気が漂い始めた。



その沈黙を突き破るように、りっちゃんが口を開いた。



「…で？ひくってなに？君は…Aが好きなの？」



「っ…」



ゆうた先輩が戸惑う。



嫌だ。聞きたくない。



この恋に可能性がないことくらい分かってるから。



「好きじゃない」、なんて言葉。









これ以上聞きたくないよ。

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