彼女が死んだ。【文スト】

【カ】〜泉鏡花の手紙〜 ページ1

彼女が死んだ。
ポートマフィアの作戦参謀長だった。

キレる頭と冷酷非道な性分、そして強力な異能力。美しい容姿とは裏腹に、冷め切った目。
彼女は敵味方に関わらず怖れられた。

だけど、私の様に彼女の優しさに触れた者は、そんな彼女を＿＿＿＿＿＿姐様を、慕っていた。

『鏡花。生きていく上で妥協は必要なのかもしれない。だけど、自分の本心に背く事をしてはいけない。上辺だけを連ねる人間が、私は一番怖いんだ』

だから、私は今こうして、光の世界に居られる。

私、姐様に従ったんだ。
本心に従って、殺したく無いって。

明るい世界に触れた。光の世界を見た。

姐様は冷たいけれど、その時、とても優しい顔をした。
私はその笑顔を守りたかった。

『はい、姐様』

淡々と答えるだけの殺戮兵器はもういない。
例え私の中に、暗殺の才能があろうと。今の私は、その強さを人を守る為に使うのだ。

姐様は強い。だけど、其れは独学だ。他人に教えることの出来ない強さ。其れに憧れていた。
大切な物を、守れる強さに。

『強さは人を殺める為には無い。自己防衛と、大切な物を守る為にあるんだ。その使い方を誤った私に、其れを語る権利は無いのかも知れないが』

そんな事はない。
姐様は、《大事な物は自分に居場所をくれた中原君と、君だ》と云った。

姐様は、大事なものを守り切った。

携帯に付いた兎のストラップをくれたのは、姐様。
花飾りで髪を結ってくれたのも、姐様。
私に、殺しの術を教えてくれたのも、姐様。

だけど、姐様。私は欲張りだから。
姐様のくれた殺しの術だけじゃ、満足できなかったんだ。

だけど、今こうしてこの世界で笑えて、私は良かったと思ってる。
後悔はしてない。






ありがとう、御免なさい。姐様。


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手紙は此処で終わっている。

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大好きな姐様が、死んだ。

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