【ノ】〜太宰治の手紙〜 ページ2
彼女が死んだ。
私にとって、とても大切な人だった。
『太宰君、また中原君に悪戯でも仕掛けたのかい?』
親の様に私を叱る姿は、其れこそ家族の様だった。
残虐の限りを尽くすポートマフィアの筈の彼女に、私は幾度となく救われている。
『御免よ……守りきれなくて……有り難う……』
最後に彼女が残した言葉だった。
反論一。
君が謝る事はない。誰も何も悪くないんだ。
部下を庇った君は、きっと何処までも優しいんだろうね。
反論二。
守れきれなかった訳じゃない。君が守ったものは多いんだ。
横浜。武装探偵社。ポートマフィア、其の部下達。敦君。そして、私。
反論三。
有り難うを云うべきなのは、私の方なんだ。
ずっと昔から、君は私を助けてくれた。
私の自 殺を止めるのはずっと昔から君だ。
事あるごとに阻止され、その度に怒られ、茶化して、笑いあって。
ポートマフィアって肩書きを忘れるくらいに、そんな君の事が好きだったんだ。
だけど君はもう帰ってこない。
寝台の上で冷たくなった君に御免と呟いたけど、其れは君に届いてるかな?
まぁ、届いた所で君のお説教コースか。
『《御免》と百回云われるより、私は君に一回《有り難う》と云われたほうが嬉しいんだぞ』
ねぇ、私の襟元を掴んだ中也に反抗しなかったのは今日が初めてだよ。
本当は心底うざったらしかったんだけどね。其れは褒めてほしいな。
『君にしては頑張ったんじゃないか?』
芥川君に暴言を吐かなかったのも今日が初めてかな。
いつも会う度に酷い事を云ってくれるなと怒られたね。そんな顔を知らない部下達に、君は恐れられていたのだけど。
『いや!嘘だよ!よく頑張ったから!!』
だから。お願いだから、昔の様に云ってくれ給え。
四年前みたいに。
君が私に説教する時みたいに。
『あっ……!又嵌めたな!?』
怒ってくれて構わない。
無力で、非力な私を。
ねぇ、お願いだから。
そんな所で寝てないで、起きて、私を叱ってくれ給え。
ーーーー
手紙は此処で終わっている。
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大切な君が、死んだ。
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…*☆紫猫姫☆*…(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます!番外編でリクエストも受けようかな、と思ってましたので、時間があれば書いてみますね! (2018年11月11日 14時) (レス) id: 8cbbc17253 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 広津さんの言葉で泣きました。最高です。このシリーズで福沢社長など見てみたいな、なんて思いました。すごい好きです。本当にいい作品です! (2018年11月11日 14時) (レス) id: d70ad14a1b (このIDを非表示/違反報告)
…*☆紫猫姫☆*…(プロフ) - 市さん» ありがとうございます!黒蜥蜴と樋口ちゃんがリクエストされたので、元から書く予定だったのをなんか頑張ってしまいました笑 (2018年11月6日 18時) (レス) id: 8cbbc17253 (このIDを非表示/違反報告)
市(プロフ) - 黒蜥蜴のところで……涙腺が……。私も似たような小説を書いた事があります。でもここまで泣ける作品にはならなくて……本当に面白かったです。 (2018年11月6日 18時) (レス) id: 1ef65eb65d (このIDを非表示/違反報告)
…*☆紫猫姫☆*…(プロフ) - アカネさん» コメントありがとうございます!真逆泣いてくださる方まで現れるとは……嬉しい限りです! (2018年11月5日 18時) (レス) id: 8cbbc17253 (このIDを非表示/違反報告)
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