キミノトナリ (ページ4)

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episode4 ページ4

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「俺の彼女として、甲子園の景色観てよ」

『……へ？』

高校で出会ったあの人に、そんな告白をされたのは、高校2年生の秋だった

春の甲子園

センバツへの切符を勝ち取った後だった

ケガしたボロボロの体で何言ってんだよって思っちゃったけど

ずっと片想いしてた私にとって、人生で一番とも言えるくらいには、嬉しかった

涙が出るほど嬉しかった勝ち星

奥歯を噛み締めた敗戦

全部を、大好きな人の隣で経験した

これからも続くあの人の夢の先

自分も一緒に見れるのだと信じて疑わなかった

けど、現実はそうじゃなくて

大学生とプロ野球選手

会える時間なんてなかった

寂しさから逃げたのは私の方

結婚して、子どもも生まれた

その子どもが、私の願いを裏切るかのように、大好きな人を思い出させる顔立ちに成長した

その成長が嬉しい半面、過ぎたことと思っても、あの人の存在が大きくなっていくのを感じた

【子どもはね、翔也って名前がいい】

いつか、あの人に話した未来の話

「俺、御幸選手みたいになる！」

血は争えない

あの人を好きになってしまうのは、この子もなんだ……

そう思って、少しだけ、嬉しかったのは事実

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『ん……』

重たい瞼をあげる

懐かしい夢をみた

部屋は真っ暗で、外からは雨音が聞こえていた

『翔也？』

眠りにつくまで傍にいたはずのあの子がいない

『ｯ…どこ』

まだ下がってない熱に侵される体を動かせる

躓きながらも階段を降りた先

『しょう…や……』

蹲る我が子と、それを蔑むように見下ろす旦那

『翔也！』

振り上げた拳が、翔也に届く前に、翔也の前に立つ

『ｯ！』

ﾄﾞｶｯ

重たい痛みが、頭に響く

『子どもには手を出さないでって言ったでしょ！』

幸「うるせぇよクズ」

「そんなに俺に文句あんなら出てけ」

『は、ちょ！』

私を無理やり立ち上がらせて、雨の外に放り出した幸樹

翔「ママ！」

バタンと音を立てて、玄関の扉が閉められる

意識が朦朧とする

雫が地面を叩きつける音と、翔也の泣き声だけが耳に届く

『ごめん…ね』

体が動かない

頭も動かない

『助けて……』

せめて、この子だけでも

『……一也』