キミノトナリ (ページ18)

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episode18 ページ18

御幸

その日、懐かしい夢をみた

『別れよ…』

そう言ったあいつの目からは涙が零れていて

今までの寂しさとか、我慢とか

全部が溢れた瞬間だった

去って行く後ろ姿が忘れられない

どうして傍にいる時間をもっとつくれなかったのか

どうして気づいてやれなかったのか

ただ、後悔だけが後に残った

【私ね、一也の野球、好きだよ】

いつかの言葉だけを支えに、ただひたすら野球をした

【ほんと、野球バカだね】

【ま、そこが好きだけど】

バットを振る度、ボールを握る度に

頭の中で再生される、あいつの声

別れてんのに、女々しいって思ったけど

あいつを支えに頑張る以外のことを俺は知らなかった

･

･

懐かしい夢をみた…

気分が乗らないまま迎えた試合

それでも、この試合も観てくれてると思うと、5打数3安打2打点なんて数字を出せた

沢「絶好調っすね」

御「数字だけな」

ニヤニヤする沢村の隣で、出待ちファンのサインに応じていると

「一也くん…」

帽子を深く被った年配の女性

御「……？」

「どうされました？サインなら…」

「……Aを、知らない？」

御「ｯ！」

その女性の口から出た名前

御「…1時間後、駐車場に来てください」

それだけを言って、ファンサを切り上げる

沢「あれ、誰っすか？」

御「たぶん…顔はよく見えなかったけど」

あの声で、俺を一也くんと呼ぶのは

御「Aのお母さん」

沢「じゃぁ…」

御「なんか俺に言いてえことあったんだろうな」

わざわざ俺に会いに来るってことは

Aにとって、俺にとっても大事なことだったのだろう

御「とりあえず、早めに反省会終わらせるぞ」