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『あれ、遅かったじゃん』
練習を終え、選手たちが食事を終えた頃、私は1人、いつもの場所で一也を待ちながら素振りをしていた
今日は随分と来るのが遅かった一也
『沢村に絡まれた?』
御「いや、湊月」
『あー……ね』
送ってくれとうるさいため、最寄まで送ってあげたらしい
御「なに?嫉妬?」
『うっさい』
馬鹿にしたように、にまにま笑う一也
御「おまえノックのときから機嫌悪いだろ?」
『……うっさい』
御「天才捕手にはなんでもわかるんだよね〜」
つんつんと私の頬を啄く一也の手
『もういい、振る』
御「はいはい、今日もいい振りっぷりです」
一つ一つ、フォームを確認しながら振る
もう野球しないのに、今更なんの意味があるのかと聞かれれば、答えなんてない
意味なんてない
ただ、一也の隣で
何も考えずバットを振る時間が、好きだから
どうしようもなく、心地良い時間だから
御「もうちょい肘締めてみ」
『こう?』
御「そ、そっちのがインコースに対応しやすい」
もう、試合で打席に立つことがないってわかってるのに、一々フォームを直してくれる
もう、そんな姿を見せる日はないってわかってるのに
御「やっぱおまえ、バット似合うわ」
そう言って、笑ってくれる
ただ、この時間だけは
せめて、この瞬間だけは
誰にも奪われたくなかった
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作者名:玲海 | 作成日時:2020年2月13日 22時