episode12 ページ12
琴羽
琴「て、感じです…秒で振られましたけど」
『……へぇ』
淡々と、一也に告白したときの状況を話した私に、相変わらずぽかんと口を開けてる
『知らなかった…いや、一也が話すわけないか』
琴「ほんと、完敗ですよ」
「口を開けばA先輩のことばかり」
確率0に近い恋だったなんてものじゃない
0だった
この人には敵わない
琴「どんな気持ちで、毎日バットを握ってるんですか?御幸先輩のためですか?」
『…そうだよ、全部一也のため』
琴「青道のマネージャーなのに、全部御幸先輩のためって言ってもいいんですか?」
『ダメだね、けどね……』
少しだけ空を見上げて笑ったA先輩
『違うんだよ』
琴「違うとは?」
『青道のマネージャー…けど、一也の隣りでは天才マネージャーじゃなきゃいけないの』
琴「天才…マネージャー」
それは時々、御幸先輩がA先輩に向けて言ってる言葉
『一也が天才捕手である限り、私は天才マネージャーじゃなきゃいけない』
『何をすれば天才マネージャーになれるかわかんないけどね』
『私ね、自分勝手だからさ』
『一也の隣りにいたい…そのための努力なら…一也の隣りにいるためなら何だってする』
空を映したその瞳は
強い覚悟を決めたものだった
どこまでも真っ直ぐに、愛する人を支える
そのためのことなら惜しまない
琴「……凄いですね、先輩」
『え?』
琴「ほんとに、凄すぎます」
この人の凄さは
選手や監督をも超える鬼のノックだけじゃない
偵察班を上回る観察力だけじゃない
たった一人
愛する人を支えると決めた覚悟
琴「あーぁ、諦めよ」
『一也を?』
琴「だってA先輩には一生敵わないんですもん」
御幸先輩ばかり目で追うのはやめよう
だって私には
こんなに近くに目指す姿があったんだから
琴「次はA先輩の背中を追いかけます」
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作者名:玲海 | 作成日時:2020年2月13日 22時