episode9 ページ9
しばらく髪を撫でてると、寝息が聞こえ始めた
そっと覗くと安心しきったような寝顔
あの性悪からは想像もつかないほどに幼い
『変わんないね、一也』
無自覚かもしれないけど
血の滲むような努力を人に見せないとこ
切羽詰まってんのに、表情に出さないとこ
時々、いろんな人を敵に回しちゃうとこ
どうしていいかわかんなくなったとき、私に甘えてくるとこ
人一倍責任感が強くて
人一倍優しくて
野球馬鹿なとこも
『なーんにも変わんないね』
『ねぇ、一也』
返事のない一也に言い聞かせるように、言葉を紡ぐ
『私ね、ちゃんと知ってるよ』
『一也が頑張ってんのも』
『一也がいーっぱい考えてんのも』
『考えすぎて、思考回路限界なんだよね』
器用だけど、不器用な一也だもん
人間だもん
限界くらいあるんだよ
『天才だとか言われてるけどさ』
『ちゃんと努力できる天才だもんね』
好きなことのために
大好きな野球を
とことん楽しむために
『ちゃんと、頑張ってんだよね』
『大好き』
そんな貴方が大好きだよ
真っ直ぐで
強がりで
時々無理しちゃうやつだけど
『だから、私がいるんだもん』
一也のため
一也が1人で何もかも背負わないため
一也が、また明日も天才捕手でいるために
天才マネージャーがいるの
『大丈夫…私がいる』
みんないる
一也は、独りじゃない
パチンと明かりを消して、再び一也の隣りに寝転ぶ
子どもみたいに私にしがみつく一也を優しく抱き締め直して
目を閉じた
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作者名:玲海 | 作成日時:2020年2月13日 22時