踏み出す ページ15
後片付けを終え、ひと段落ついた頃。私が無理を言って、少しだけ晩酌に付き合ってもらうことになった。
「そういえば、君と酒を飲むなんて初めてだったな。今日はせっかくだし、君のリクエストに答えようか。」
そう言って開けた棚にはたくさんのビン。これ全部お酒なんだろうか。凄いけど、普段缶チューハイしか飲まないし、何がいいとか全然わからない……。
「……じゃあ、バーボン、がいいです……。一度、飲んでおきたくて。」
すると、彼がピクリと少しだけ眉を動かしたのがわかった。彼にとっては、バーボンは組織のことが連想されるだろうから当然なんだけど。
「……どうしました?もしかして、なかったですか?」
「いや、気にしないでくれ。バーボンがいいんだったよな?」
そう言って、横文字で書かれたボトルをグラスとともに持ってきた。ソファーに腰掛けるように言われ、グラスに注がれたバーボンを口にした。
しばらくの間、私の泣き言や仕事の愚痴なんかを聞いてもらった。酔ってなかったら絶対言わないような話も、降谷さんの話術、というか誘導尋問でボロボロと口走ってしまった。さりげなく、なぜバーボンを選んだのかも聞かれたが、それを漏らすほど落ちぶれてもいないので、どうにか誤魔化した。まあ、酔った勢いで告白してしまおうとは思っていたが。
「……降谷さぁん、ちょっと失礼しますー!」
そう言って降谷さんの隣に座った。本当にぴったり隣。酔ってなきゃ絶対出来ない距離だ。
「鳴海……、飲みすぎだ。」
「大丈夫ですー!それより、」
ちらっと彼の顔を見た後、その腕に抱きついて彼の肩に頭を乗せた。それは降谷さんにとっても予想外だったようで、一瞬固まったのがわかった。私もアルコールで気が大きくなっているとはいえ、内心凄くドキドキで。
「……今日は、今だけは、私のことをちゃんと見てほしい、です……。」
すると、予想通り降谷さんは私を引き剥がそうとした。彼ならきっとそうするだろうと確信していたし。でも、私もこうなれば最後まで言うと覚悟を決めているわけで。彼の腕に体をさらに密着させて、必死にしがみつく。
「お、おい!さすがに酔いすぎだ!」
「私のお願い聞いてください!」
「……、いい加減に……」
降谷さんは若干怒ったような声で、ほぼ手加減なしの力で私を引き剥がした。降谷さんの前では私の力など無に等しく、抵抗する間もなかった。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (4月27日 22時) (レス) id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
天然石 - 続き書いて (2021年11月11日 19時) (レス) @page30 id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
焼きプリン - とても面白くて今日一気見しました!!!続きがとても気になります!楽しみにしてます。頑張ってください! (2021年3月25日 20時) (レス) id: ecb566eb91 (このIDを非表示/違反報告)
す だ(プロフ) - 頑張ってください!たのしみにしてます (2020年7月14日 2時) (レス) id: ebbf33f874 (このIDを非表示/違反報告)
月乃(プロフ) - 花束さん» ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります!頑張ります! (2020年4月24日 12時) (レス) id: 34cc67c93b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月乃 | 作成日時:2019年10月6日 18時