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「ちなみに俺にも承太郎さんにもいるっスよ。んで、Aさんのスタンドは…なんつーか、」
「ユニコーンのような形をしているな」
見えない左側を見つめてみるとなるほど夜に感じていた視線の主は彼だったのか。彼なのか彼女なのかは不明だけど。いわれてみて、そこにいると意識してみてみれば存在をうっすらと感じることが出来るけれど視認には至らない。
「でもずっと出っ放しってぇのも大丈夫なんスかね…スタンド使用には精神疲労を伴うのに」
「おそらく出てはいても能力は使っていないしあまり消耗していないんだろう。スタンドに耐え切れねえ身体ならきっととっくのとうに倒れてるだろうよ。用心に越したことはないが今すぐに大変なことになるとは思えない」
何かあればすぐに声を上げるか壁を叩くように、何度もそう言われて頷き続けたせいで首が痛い。なぜそんなに親切にしてくれるのか甚だ疑問だし、まだ全てを信じて飲み込むことは出来ていないけれど仗助くんもいるし一先ずは言うことを聞くとしよう。何もなければほとぼりが冷めれば帰れるだろうし。
そんな風に軽く事態を受け止めなければ自分が置かれている状況に心が不安で押しつぶされそうだった。
案内された隣室はとても広くて豪華で…落ち着かなくって辛くて。こんな状況でなければきっと、バスルームや洗面所を覗いてははしゃぐことが出来たのに。仗助くんも空条さんも親切で、とても良い人なのに不安は消えなくて。自分は一体何者なんだろうか、なんでこんなことになったんだろうか。ゾクリと背中に刺さるのはいつもの視線だ。どうやら私のスタンドが視線の正体なんだと思うのだけれど、視線だけ寄越すくらいなら姿を現してほしい。グロテスクだったり、怖い見た目じゃなきゃあいいけれど…もしも怖い子だったら一生見れない方がマシかもしれないなあ…
「ねえ、そこにいるのかしら」
返事なんて聞こえるはずもないのに問いかけが、バカみたいに広い部屋に響く。じわりと滲んできた涙には気づかないふりをしてベッドへと寝転ぶ。某殺し屋のように俺の後ろに立つなとは言わないけれどこんな時は背中になにかついていないと不安でたまらなくなる。もっとも幽霊だったらそんなこと関係なく来てしまうのだけれど。
気づけば夜も遅い。眠れるかどうかわからないけれどそっと目を閉じてみよう。薄れていく意識の中にふわりと布団をかけられた気がした
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作者名：ぴーぬ | 作成日時：2021年8月22日 22時
