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「そろそろ、家に帰ろうかと思うのですが…」
「…だめだ」
この押し問答は何回続いているだろうか。空条さんのとなりに座ってコーヒーを飲む仗助くんは苦笑いするばかり…と言うことは彼はきっとどちらにつくか悩んでいるはずだ
「俺はどちらの言い分もわかるっス」
ミルク多めのコーヒーを一口飲んだあとに形のいい唇を気まずそうに開く様をじっと見つめてしまった。
「スタンドの能力とそれが身体に悪影響がないこともわかったし帰りたいAさんと、スタンド同士が惹かれあうせいで危険に巻き込まれるかもしれないAさんを放置できない承太郎さん…どっちも間違っちゃあいないッスよ…でもそろそろ日常に戻ってもいいんじゃあないかと仗助くんは思うわけですよ」
うんうん、仗助くんは私の味方だ。よかった。こくこくと頷いてみせた私をエメラルドグリーンが捉える。お互い過ごしてきた時間は人生のなかでは短い間とは言え、近しいといっても過言ではない程度の距離感で接してきてわかってきている。この瞳は引き下がらないときの色だ
「何が不満だ」
「ふ…不満なんて」
あるわけがないのだ。逆になに不自由なく生活させていただいてる現状に慣れたくない。だって掃除もしなくていい、ご飯も作らなくていい部屋に住むだなんて…そんな生活に慣れてしまったら自堕落な私は元々の日常に戻れなくなってしまう。そんな想いが大半を占めているからこそ、今のうちにこの箱庭のような空間から抜け出したいと言っているのだけれど、どう彼に伝えれば良いのか適当な言葉が見つからない。思わず苦笑いをしてしまったらしい私を苦虫を潰したような表情で見つめる彼。無表情そうにみえて存外顔に出やすい質であることは最近気づいたことだ
「…スタープラチナで突然つつくのは止める」
「…え？」
「週末暇潰しに酒盛りに誘うのも止める」
「んん？」
「…他になにかあるか」
「あの、私は別にそれが嫌だという訳じゃあ…」
確かに、意外と子供っぽいんだなぁだとか弱くはないとはいえ彼に付き合って飲んでいると次の日は若干二日酔いになってしまったり。まぁまぁの損害を被ることはあるけれど、何度でも言いたいのは別にそれが嫌でお願いをしているのではない。ただただ堕落したくないというか、いつまでも続くことではないからこの生活がなくなったときのことを憂いているだけだ
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作者名：ぴーぬ | 作成日時：2021年8月22日 22時
