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「スタンドを使うだなんてずるいです」
「アンタが先に使ったんだぜ」
「うっ…でも、そんなつもりは…」
こんな時、姿の見えぬ自分のスタンドを恨む。布団までかぶれられてポンポンとお腹のあたりを叩かれれば完全に幼児扱いだ
心音に合わせるかのようにリズムよく叩かれているといつの間にか空条さんが近くにいるという緊張も忘れて少しずつ目が落ちていきそうになるからやっぱり私は少し子供っぽすぎるのかもしれない。そんなことを考えていると静かな空間に衣擦れの音が響いて、どうしたのかなと先ほどまで空条さんがいた方向に視線を向ければ彼と目線が交わった気がした
「本当はすぐに治してやりてぇんだが…」
「…？」
「手、痛いんじゃあねぇか」
そっと手の甲を撫でられるとまぁたしかに痛いことは痛いけれど、もっと酷い目に合わされていたかもしれないことを考えるとそこまで苦痛ではない。つい男のことを思い出してしまってふるりと肩を震わせてしまったけれど暗闇で良かった。きっと空条さんには気づかれていない。もう寝たふりをしてしまおう。そうしないと私が寝るまで空条さんが眠れないということに気づいて目を閉じる
「寝た、か…」
心地良くお腹を叩く手が止んだ代わりに頭に暖かい感覚が乗せられる。暖かいということは空条さんかな…寝たふりをしている内に本格的に眠くなった私はもはや目を開けることも億劫だった
そっと、優しく頭を撫でられれば空条さんのいつものお高そうな香水の香りではなくシャンプーの香りがする。同じホテルのシャンプーではないのだろうか…自分のよりも良い香りがする気がする。
「ゆっくり休め」
そっと離れた手を名残惜しいだなんて認めてしまったら最後だ。彼はいつかはアメリカへ帰るのだからいつまでも頼っていられない。仗助くんだってそうだ、いつまでも甘えてなんかいられない。早くスタンドを使えるようにならなくちゃ。頼りないって思われないようにならなくっちゃ。そうやって考えるのに毎度彼らはそのままでいいと言ってくれるものだから甘えてしまう自分の弱さを早くなんとかしたい。
次の日、どうやら朝イチで呼びつけられた仗助くんにすぐ手を治してもらったけれどどうやったらこんな傷つくるんスか？という疑わしげな瞳と目線を合わせることは出来ずにいると隣で呆れ顔で私を見つめる空条さんはこんな時はまったく助けてくれなくって怨めしげな視線をぶつけることしか出来なかった。
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作者名：ぴーぬ | 作成日時：2021年8月22日 22時
