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「いたっ…痛いです、空条さん…」
「これは素直に俺に頼らなかった罰、だぜ。仗助には転んだことにして治療をさせる。いいな？」
「でも…」
「…はぁ、もっと自分を大切にしろ」
「仗助くん、まるで自分が怪我したみたいに辛そうな顔するんですもん…」
「そんな顔させたくねえなら今後は気を付けるこったな。これは絶対に治療させる。アンタが泣いて嫌がったって羽交い締めにしてでもな」
次に彼に会う頃には包帯も取れてバレないはずなのにわざわざ呼びつけて治療をさせるだなんて…と拒絶の言葉をぶつけても正面からオラァと壊されるばかりだった。どれだけ彼はこの傷を気にしてるんだろうか。それこそこれは空条さんのせいではないのに。
処置を終えると今日は疲れているだろうから早く寝てしまえ、と言われ部屋をあとにする。きっと私がだいぶ落ち着いたことを見抜いて言ったのだろう。彼はいかんせん鋭すぎる
「すまなかった」
扉がしまる寸前に聞こえた謝罪の声になにがどうして彼が謝ったのか意味が分からなくて首をかしげた。手当てしてもらっている間も、車の中でも散々謝ってはしつこいぜと怒られていた私がもう一度謝るならばともかく、空条さんが謝る理由なんて何一つ見当たらない。心底不思議そうな顔をしていたであろう私の頬にそっと触れた左手の親指が目尻を撫でる。
「あと数分早く見つけてやれば良かった」
「えっ…」
そうか、彼は優しすぎて強すぎるんだ。出来ることが多過ぎて、何かあったときに自分がこう出来たのではないだろうかとたくさんの可能性を見つけ出してしまうのだろう。私は暴漢からこうして無事に助けてくれただけで感謝こそすれ彼のことを責める気持ちはこれっぽっちもないのに
「本当に、ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすみません…」
この一言を言うだけで手一杯で、見上げた彼はトレードマークの帽子の鍔を深く下げているせいで表情が伺えなかった。何て言えばいいのか正解がわからなくって、でもとにかく空条さんのせいでは決してないということを伝えたくって言った言葉は果たして正解だったのだろうか
「あの、ヒーローみたいで…とてもかっこ良かったです…えっと、うまく言えなくてごめんなさい、おやすみなさい」
自分の年の1/3もいかない子供が言うような台詞を言ってしまって、時間差で羞恥心が襲ってくる。逃げるように扉を閉めた私には部屋に残された彼の頬が少しだけ染まっていたことを知るよしもなかった。
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作者名：ぴーぬ | 作成日時：2021年8月22日 22時
