▽ ページ29
.
「………え？」
ぽかん、とする私を見て、ひなたは笑うでも呆れるでもなく、そのまま続けた。
「俺には、そう聞こえるけど。要するに、“貴方の言っていることが正しいので従います”ってことでしょ？」
「ちが、」
「そうだよ」
私の否定する言葉を遮って、ひなたは言う。
違くて、そうじゃなくて。
「“どうしよう”だなんて、答えは出てるようなものじゃん。
迷うくらいに、Aの夢はそれだけのことだったんでしょ？」
「__違う!!」
気づけば、声を荒げていた。
一番私を理解してくれて、親のいない私にとっては仲間だけが頼りなのに。
その一番の仲間に否定されたのが悲しかった。
「私は、あの本を読んで、ナポレオン様みたいになろうと思った！
ただの憧れや夢なんかじゃない！
あのとき私を救ってくれたナポレオン様みたいに、私も誰かを救いたいって思った！
_これは、綺麗な夢物語や理想なんかじゃなくて、私のどろどろした欲望だよ」
お前なんかいらない、神の子なんて生まれてくるべきじゃなかった、近づくな疫病神……。
ずっと、そう言われて育ってきた。
でも、あの本を読んでしまったから。
もし私がナポレオン様みたいになれれば、この世界で“ 必要価値のある私” になれるかなって思ったんだ。
こんなのかっこ悪くて醜くて、誰にも言えないけど。
「正論とか、世論とか、建前とか、真実なんてどうでもいい。
私は魔法で人を傷つけない英雄になりたい。
私の始まりはそれで、どんな正論を突きつけられても、そこは変わらないんだ」
そう言い切ると、その場はシンと静かになる。
読めない表情で、私を見つめるひなたとそのひなたを見つめる私。
沈黙を破ったのは、ひなただった。
「__そうだね。それが、Aの答えなんじゃない？」
「え、」
ふわり、とひなたは優しく笑った。
…ああ、そういうことか。
その笑みを見て、私はひなたが言わんとすることがわかった。
ひなたがあんなこと言ったのかも。
「__うん、私はやっぱり、みんなの言う“叶うわけのない夢”を諦められないや」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 211人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コフウ - はじめまして！とても面白いです！そして、この作品はこれにて完結でしょうか…？ (2020年5月20日 14時) (
レス) id: 16a5bce890 (このIDを非表示/違反報告)
夕月 刹那(プロフ) - あるみかんさん» 受験なら仕方ないですね、、、合格目指して頑張ってください！ (2018年9月11日 21時) (レス) id: 44778e7901 (このIDを非表示/違反報告)
名無しちゃんくんさん - 初めまして！コメ欄に初投稿させていただきます！とても面白くいつも楽しみにしています！受験生なんですね！！頑張ってください！！目指せ合格！！！ (2018年9月3日 20時) (レス) id: c58b850b31 (このIDを非表示/違反報告)
あるみかん(プロフ) - ♪咲那♪さん» ありがとうございます！更新ができない分、頑張ります。 (2018年8月26日 17時) (レス) id: 3df0130dff (このIDを非表示/違反報告)
♪咲那♪(プロフ) - 受験勉強頑張ってくださいね！いつまででも待ってますw←まあ、無理はしないでくださいね！といっても私も来年受験生ですけどw (2018年8月26日 17時) (レス) id: 282e7e9f5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あるみかん | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=48be83eaada675e79ed496ea5cdf8f4f...
作成日時：2017年12月21日 21時
